研究課題/領域番号 |
16K08415
|
研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
新槇 幸彦 東京薬科大学, 薬学部, 教授 (90138959)
|
研究分担者 |
多田 塁 東京薬科大学, 薬学部, 講師 (70635888)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 粘膜ワクチン / がんワクチン / リポソーム / 子宮頸がん / HPV |
研究実績の概要 |
本研究では、粘膜アジュバント活性を有するリポソームとHPV由来oncoproteinsであるE6およびE7抗原の経鼻投与により、抗原特異的なCTL活性を誘導することにより経鼻投与可能な次世代型の非侵襲性子宮頸がんワクチンの開発を目的としている。H28年度は、本ワクチンシステムの抗原として用いるE6/E7抗原のリコンビナント蛋白質発現系の構築およびリポソーム経鼻投与によるCTL活性誘導能の基礎的検討を目的とし、以下の結果を得た。 ①、まず始めに、HPV16由来のE6およびE7蛋白質が有する発癌活性を消失させた変異体をインバースPCRあるいはMulti site-directed mutagenesis法にて作製した。作製した変異遺伝子を大腸菌発現ベクターであるpCold1ベクターにクローニングし、pCold1/mutated E6、pCold1/mutated E7およびpCold1/mutated E6-GS linker-E7プラスミドを作製した。 ②、これらベクターをE. coli BL21 (DE3)へ形質転換し発現を確認したところ良好な発現を認めたものの封入体形成のため可溶性抗原は得られなかった。そこで、各種大腸菌株とシャペロンとの共発現系を試したところ可溶性抗原を得ることが出来た。しかしながら、高純度の可溶性抗原を得ることが困難であったため、作製完了には至っていない。 ③、リポソームの経鼻投与によるCTL活性の評価法をOVAをモデル抗原としてIFN-γの産生等を指標とした評価法を確立した。 以上、本年度の検討ではHPV抗原の発現系を構築したものの高純度かつ大量のリコンビナント蛋白質を得るまでには至らなかったものの、リポソームの経鼻投与によるCTL活性評価法の確立は出来た。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
H28年度に予定されていた検討項目として、HPV抗原のリコンビナント蛋白質作製およびリポソームの経鼻投与によるCTL活性の誘導能および評価法の確立が挙げていた。これらの検討項目のうち、HPV抗原のリコンビナント蛋白質を大量かつ高純度で得る目標が未だに達成できていない。従って、本研究計画はやや遅れていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
H28年度に得ることが出来なかったHPV抗原のリコンビナント蛋白質作製を引き続き進めると共に、OVAをモデル抗原としたリポソームによる経鼻投与型がんワクチンシステムの構築を行う。具体的には、H29年度に下記の検討項目を実施する。 ①、HPV抗原の大腸菌発現系は純度に問題を生じたため、Strep (ii)タグを利用したアフィニティ精製を試す。また、ピキア酵母あるいは哺乳細胞を利用した発現系も同時並行で検討する。 ②、抗原が作製出来次第、本リポソームと共に経鼻投与することにより、抗原特異的免疫応答を全身及び粘膜の両面で誘導可能か否かを、抗原特異的IgAおよびIgG産生あるいはCTL活性を指標に検討する。さらに、免疫条件の最適化を実施する。 ③、OVAをモデル抗原として用い、経鼻投与型のリポソームがんワクチンの有効性を評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度の予算はほぼ使用したが、研究計画がやや遅れているため少額の残金が生じた。そのため、動物実験に使用予定であったイソフルラン吸入麻酔器の購入を延期した。従って、残金はイソフルラン吸入麻酔器の購入に利用予定である。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度使用計画としては、HPV抗原のリコンビナント発現系の作製とこれらを抗原蛋白質とリポソームの経鼻投与による抗原特異的免疫応答の検討を行う予定である。これらの実験に必要なイソフルラン吸入麻酔器および実験動物の必要数が相当数になると思われる。また、各種サイトカイン定量のためのELISAキットあるいはCTL活性の評価など比較的高価は試薬を必要とするため、これらの消耗品購入に充てる予定である。
|