研究課題/領域番号 |
16K08416
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
青山 隆夫 東京理科大学, 薬学部薬学科, 教授 (60262028)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 肺MAC症 / クラリスロマイシン / フルオロキノロン / レボフロキサシン / 薬物相互作用 / MDR1 |
研究実績の概要 |
肺MAC症には、主薬のクラリスロマイシン(CAM)にリファンピシン(RFP)などを加えた多剤併用療法が推奨されているが、この治療法に対して有効性を示さない場合にはレボフロキサシン(LVFX)などのフルオロキノロン(FQ)を用いることがある。しかし、CAMとLVFXの併用により効果が減弱することが報告されている。本研究室の臨床研究においても、Control群(CAM+RFP併用)とLVFX群(CAM+RFP+LVFX併用)の菌陰性化率を比較した結果、併用で治療成績が低下することが示された。原因として、MDR1の基質である両剤が肺組織のMDR1を介して競合し、MAC菌の感染巣である肺胞マクロファージや気道上皮被覆液(ELF)へのCAM移行性が低下したと考えられる。本研究ではCAMの体内動態からその機序を解明することを目的とした。 ICR系雄性マウスに、単独群にはCAM50 mg/kgを、併用群には同量のCAMとLVFX50 mg/kgを胃内へ投与した。0.5-12h後に採血および気管支肺胞洗浄を行い、遠心分離して得た上清中薬物濃度は、LC-MS/MSを用いて測定した。ELF中濃度は、血漿中およびBALF中尿素窒素濃度を測定してその希釈倍率を求め、BALF中薬物濃度より換算し求めた。血漿中CAM濃度のCmaxは単独群で2.2ug/mL、併用群で4.8ug/mLであり、AUCも併用群において1.7倍高かった。LVFXの併用により、小腸に発現するMDR1において両剤が拮抗し、CAMの吸収性が亢進したことが示唆された。一方、ELF中CAM濃度のCmaxはそれぞれ38.7ug/mL、55.3ug/mLであり併用群において高値を示したが、ELF/血漿中濃度比およびELF/血漿中AUC比は同程度あるいは併用群において低い傾向が見られ、肺への移行性は単独群の方が優位であることが示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
とくに問題なく進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
各薬物のマウスへの投与量を検討し、in vivo実験においてn数を確保する。さらにMDR1を発現しているCalu-3細胞を用いて、より詳細に検討する予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
使用予定額のわずかに下回った結果であり、特に理由はない。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額と合わせて使用する予定である。
|