研究課題/領域番号 |
16K08418
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
河野 弥生 東京理科大学, 薬学部薬学科, 助教 (50711660)
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研究分担者 |
花輪 剛久 東京理科大学, 薬学部薬学科, 教授 (00302571)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 熱応答性 / 経皮吸収型製剤 / 塩化ビニル / トリメット酸トリ(2‐エチルヘキシル) |
研究実績の概要 |
塩化ビニル(PVC)を輸液チューブ等の医療用具の素材として用いる際には、柔軟性を増加させるためにトリメット酸トリ(2‐エチルヘキシル)(TOTM)などの可塑剤が添加されている。PVCは単独でも熱可塑性を有するが、TOTM分子がPVC分子鎖間に可塑剤として存在すると、低温度領域ではガラス状態となるためPVCの分子運動性は低くなるが、温度が上昇するとゴム状態となるためPVCの分子運動性は大きくなる。そこで本研究では、PVCにTOTMを添加した際の温度変化による材質の分子状態の変化を利用した熱応答性経皮吸収型製剤の開発に着手した。モデル薬物にインドメタシン(IND)を用い、種々のTOTM含有量のフィルムを調製した。DSCによるTg測定、クリープメータによる物性評価、溶出試験によるINDおよびTOTMの放出挙動の検討を行った。DSCの結果から、PVCフィルムの加熱による融解由来の吸熱ピークはTOTM含有量の増加に伴い低温側にシフトすると共にTgの低下が認められた。また、TOTM濃度の増加に伴いフィルムの初期弾性率は低下し、柔軟性が増大していることが明らかになった。TOTM含有率0および20%のPVCフィルムに付着性は認められなかったが、40~60%のPVCフィルムは付着性を示した。放出試験では、Tgが体温付近のPVCフィルムからのINDの放出はTg以上の温度で認められ、加熱に伴うフィルム内部の構造変化がINDの放出に影響すると考えられた。また、IND含有量の増加に伴いINDの放出量も増加し、速度論的解析を行ったところ開始15分までのINDの放出は0次放出を示した。一方、いずれの系においてもTOTMの溶出は認められなかった。以上の結果から、TOTM含有PVCフィルムは熱刺激によって薬物放出が制御可能な薬物担体として、応用可能であることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究では、まず、薬物含有の可否をモデル薬物としてINDを用いたフィルムの調製方法を確立し、フィルム中からのTOTMの溶出がないことを確認している。次年度に予定されていたフィルムからの薬物放出の可否についての検証も行なっている。また、フィルム内の薬物の分子状態の評価はINDでは検証できており、次年度にIMでの検証を行う予定である。 当初初年度に計画していたイルソグラジンマレイン酸(IM)での細胞レベルでの創傷治癒効果は現在検証中であり、繊維芽細胞を用いたWSTアッセイにより、IMの濃度依存的に細胞増殖効果を示すことは検証済みである。
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今後の研究の推進方策 |
IMの創傷治癒効果を引き続き細胞レベルで検討する。表皮を構成する角化細胞であるヒトケラチノサイトを細胞培養用ウェルプレートに培養し、ウェル中央部をライン状にスクラッチして損傷モデルを作成後、種々の濃度のIMを添加し、24時間培養後の損傷部の面積を測定することによりIMの創傷治癒効果を評価する。このスクラッチアッセイの結果から、フィルムに含有するIM濃度を決定する。 また、フィルムにIMを含有させた際の分子状態の評価およびフィルム形成に及ぼす影響をDSCを用いて評価する。また、IMとTOTM、PVCとの相互作用についてFTIRにて評価する。 さらに、本課題で調製するIM含有フィルムは、創傷部に貼付するとフィルム内から患部表面の温度変化に応じてIMが放出され、患部にデリバリーされることを想定している。そこで、フランツ型拡散セルを用いて表皮モデルであるマウス表皮に対するIMの皮膚透過性を評価する。患部表面の温度およびpHを考慮し、還流液の温度、緩衝液のpHを変化させることで、IM含有TOTM-PVCフィルムからのIM溶出に関する温度依存性、および創傷部位のpH依存性の有無を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験計画において、次年度に検証する予定のものと検証する順番を変更した。フィルムの物理化学的特性を評価した上で細胞レベルでの検証を行う必要が生じたため、購入機器が変更となり差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度においては前年度に検証しなかった実験を遂行するため、従来の助成金と合わせて使用する予定である。本研究で用いるフランツ型拡散セルは一定温度の条件下で評価を行う器具である。フランツ型拡散セルは本学が所有しているが、還流液を流すための外部循環型恒温槽を所有していない。本研究では、TOTM-PVCの温度による放出挙動の変化を検証する。そのため、15℃から100℃の範囲で還流液の温度を制御できる外部循環型恒温槽を購入する予定である。また、初年度に十分に実施できていない細胞実験を行うため、クリーンベンチでの細胞実験時に使用するアスピレーターを購入する予定である。
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