研究実績の概要 |
これまで、報告者はトポイソメラーゼ阻害剤であるTAS-103並びにdoxorubicinによるアポトーシスにDNA修復酵素であるPARP (poly ADP ribose polymerase)の活性化によるROSの関与を明らかにした。その際の実験に用いたPARP阻害薬は4-amino-1,8-naphthalimide, 6(5H)-phenanthridinoneであり、いわゆるPARPに対する選択性が低い第一世代の阻害薬であった。今回、PARPに対する選択性がより高い新世代のPARP阻害薬であるolaparib, veliparib 並びにPRAPの基質であるNAD+の生合成を阻害するFK866 (daporinad / APO866) を用いTAS-103とdoxorubicinの細胞毒性に対する影響について検討した。実験はヒト前骨髄性白血病細胞であるHL-60細胞を用い、薬物を作用させた。細胞毒性の評価はトリパンブルーによる色素排除試験法により行った。結果として、まずTAS-103とdoxorubicinの至適時間は24時間、至適濃度はTAS-103が0 - 0.5 μM、doxorubicinが0 - 5 μMであった。次に併用薬であるolaparib, veliparib, FK866の有効濃度(阻害活性があり無毒性)を決定したところ、olaparib, veliparibでは1 μM, 10 μM (24時間)、FK866では10 nM(48時間), 1 μM(24時間)であった。さらに併用効果について検討したところ、TAS-103とdoxorubicinの細胞毒性に対するolaparib, veliparibの併用効果は見られなかった。また、TAS-103とdoxorubicinの細胞毒性に対するFK866の併用効果はTAS-103で見られなかったが、doxorubicinでは観察された。
|