研究課題
本研究課題の目的は、アントラサイクリンと活性酸素 (ROS)との関係を物理化学的な観点から生物学的な観点までを幅広く明らかにし、アントラサイクリンの作用機構と創薬に関する基盤となり得る活性酸素シグナル伝達に関する情報を再構築することである。今年度は、アクラルビシン (ACR)を用いてCu(II)存在下でのDNA損傷性と細胞死について検討した。アポトーシス誘導ではヒト骨髄性白血病細胞HL-60およびHL-60由来でカタラーゼ高活性のHP100細胞を用いた。DNA損傷の解析にはプラスミドDNA を用い、ACRと金属イオンを 37℃で反応させた。さらにcytochrome c還元法によりO2-生成を測定した。細胞実験においてACRによる細胞死、DNAラダー形成、caspase-3/7活性上昇が認められ、HL-60 > HP100であった。Cell-freeの実験において、ACR単独では DNA 損傷は認められなかったが、Cu(II)存在下ACRは濃度依存的にDNAを損傷した。この損傷はmethionalおよび Cu(I) と特異的に結合する bathocuproine により抑制され、catalase で抑制されたが、フリー OH ラジカルスカベンジャーでは抑制されなかった。また、Cu(II) 存在下でACR は O2-を生成した。ACRのアポトーシスイベントはHL-60 > HP100であり、その作用機序にH2O2が関与すると考えられた。また、ACR は Cu(II) 存在下で活性酸素種を生成し、DNA を損傷することが判明した。この活性種は OH ラジカルよりも Cu(I) と H2O2 とによる complex と考えられた。これらの機構は、ACRの細胞死におけるH2O2の関与を支持している。
3: やや遅れている
今年度は、アクラルビシンのみの検討で終わってしまった。31年度は他の薬剤も検討し、俯瞰的にアントラサイクリンを検討することを考えている。
31年度は他の薬剤も検討し、俯瞰的にアントラサイクリンを検討することを考えている。さらに論文にまとめ、論文投稿を行いたいと考えている。
助成金の使用用途として、実験試薬の購入を予定していたが、これまで購入したものでほぼ間に合ったためである。
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Anticancer Research
巻: 38 ページ: 2643-2648
10.21873/anticanres.12506
http://tdb.kinjo-u.ac.jp/search/