研究課題/領域番号 |
16K08422
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
鬼頭 敏幸 愛知学院大学, 薬学部, 教授 (50243027)
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研究分担者 |
北川 好郎 愛知医科大学, 医学部, 講師 (00440719)
三鴨 廣繁 愛知医科大学, 医学部, 教授 (00262775)
馬場 礼三 中部大学, 生命健康科学部, 教授 (90287029)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 川崎病 / バイオマーカー / 血管炎 / 血管内皮 / 炎症マーカー |
研究実績の概要 |
川崎病は、重大な合併症として冠動脈病変があり、後遺障害として重大な病態である。川崎病の治療としては大量ガンマグロブリン(IVIG)療法が確立している。しかし、初回IVIG治療に反応しない不応例が約15-20%存在する。またこれらIVIG不応例において高率に冠状動脈瘤が発生することが知られている。研究者らは、PTX3は小児の全身性血管炎である川崎病の重症度に関連し、冠動脈瘤形成の予後因子であることを見いだし、血管炎病変に関与している可能性を報告した。1)PTX3正常値は2.7±1.0ng/mlで、有熱非KD対照11.76 ± 2.2, KD病児のPTX3値は24.6±5.7 ng/mlと有意に増大しIVIG治療後は、12.92± 2.4と低下し(p<0.001)の有意差をもって著減した。2)IVIG反応例と不応例との比較IVIG反応例、IVIG不応例のPTX3値は、それぞれ17.0±1.46, 45.9±7.5で、unpaired t検定では、P<0.0001と有意であった。cut off値を25.6 ng/mLに設定した場合のIVIG不応の予測は感度75%,特異度80%、オッズ比は3.750となった。3)IVIG投与回数、CAL合併の有無と測定値との相関を検討したところ、IVIG治療前のPTX3値はIVIG非使用12.4±7.5, n=5、IVIG1回; 17.6±10.0, n=33, IVIG2回; 29.2±16.4, n=14, IVIG3回; 82.6±14.4, n=3であり、PTX3値とIVIG投与回数は有意の相関を認めた。Pearson r"0.8507, R2=0.7236 冠動脈瘤発症の有無のcut-off値を77.44と設定するとPTX3値の異常高値は発症のriskを強く予測しえた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、PTX3のタンパク質相互作用の解明を通じて、川崎病の本態である血管炎発症の機序への関与について解析する。生体防御作用に期待して、PTX3による川崎病の治療法の確立を目指している。PTX3の分子認識メカニズムを利用し、高感度のプロテオミクスの手法を用いた複合体解析を行い、PTX3と強い結合をもつペプチドの中から川崎病の病因検索を目指している。PTX3高値の川崎病症例の血漿を使用して、PTX3結合タンパクの同定を行っている。PTX3が同定されて、同定されたペプチドの本数で判断していくと、必ずしも量と比例しないが、多く同定されているものは候補に近いと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
PTX3の分子認識メカニズムを利用し、高感度のプロテオミクスの手法を用いた複合体解析を行い上記のようにPTX3は敗血症の有用なバイオマーカーとして捉えられつつあり、川崎病に類似する炎症現象である敗血症におけるPTX3に関する知見の現在の理解は以下の様である。敗血症においては、好中球細胞外トラップ(Neutrophil extracellular traps, NETs)という病原体の処理機序が機能していることが知られている。NETsは細胞外殺菌機構として生体防御に寄与するが、強い傷害因子を細胞外へ放出するため、敗血症、血栓症や炎症性・自己免疫性疾患などの病態形成に関与することが報告されている。NETsにおいては、DNAやヒストン、抗菌タンパクなどが細胞外に放出され、それらが細胞障害性をもつ。NETsで放出されるヒストンは細胞外では敗血症を引き起こすタンパク質である。ヒストンH3,H4が内皮細胞に対して細胞毒性をもつこと、マウスにヒストンを経静脈投与すると肺への好中球集積細胞内出血、血栓形成が起こり致死することが知られているが、ヒストンH4に対する抗体を投与することによって敗血症モデルマウスの予後が改善することができたと報告されている。また、PTX3を人為的に発現させたマウスは敗血症による死亡への耐性が上がることが知られていたが、そのメカニズムは十分に解明されていなかった。このような系に川崎病の発症、進展モデルをあてはめ検討していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
異動に伴い、研究環境が整わず、実験環境の整備に時間と労力を取られてしまった。以前までの検体蓄積で、共同研究施設で解析が進んでいたため、成果は上がっていて、学会発表は行えている。
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次年度使用額の使用計画 |
共同研究者からの実験施設の移設を受けて、実験の継続に務める。
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