研究課題/領域番号 |
16K08428
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研究機関 | 広島国際大学 |
研究代表者 |
田山 剛崇 広島国際大学, 薬学部, 准教授 (80389121)
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研究分担者 |
杉原 数美 広島国際大学, 薬学部, 教授 (20271067)
谷口 良彦 広島国際大学, 薬学部, 教授 (30403520) [辞退]
北村 繁幸 日本薬科大学, 薬学部, 客員教授 (40136057)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 医療薬学 / ニコチン製剤 |
研究実績の概要 |
近年、社会的背景により禁煙が促進されている。禁煙補助剤の主成分であるnicotineは、cytochrome P-450 2A6 (CYP2A6)によって5’-hydroxynicotineに代謝された後、aldehyde oxidase (AO)によってcotinineへと代謝される。これら酵素活性には、大きな個体差が存在しているため、これら代謝酵素活性を考慮したニコチン製剤の投与設計が合理的である。我々は、①ニコチン製剤を販売している薬局でも簡便にnicotine濃度評価を行える手段を開発し、②その濃度比よりnicotine代謝酵素活性を推定することでニコチン製剤の適正使用を推進することを目標としている。 昨年度、我々はnicotine、cotinineおよび5’-hydroxycotinineをTLC (薄層クロマトグラフィー)にて分離後、バルビツール酸にて赤色に呈色させることで各物質の濃度を半定量することを試みた。しかし、これら呈色は不十分であり、同時に評価のバラツキが認められた。今年度、半定量を精度よく行うことを目的とし、紫外線照射前後の蛍光吸収度変化によりこれらの濃度を推定した。各化合物とも10 μg/mL濃度まで半定量が行えた。また、ヒト唾液を用いた検討においても、喫煙直後と限定的であるが、nicotineおよびその代謝物のスポットを確認することができた。今後、半定量の評価を行い、詳細な検討を行う予定である。 また、現在、CYP2A6活性の阻害剤であるmethoxsalenおよび AO活性の異なる系統のラットを用いて、CYP2A6およびAO活性がnicotineの体内動態に及ぼす影響についても検討している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究を遂行する上で、nicotineおよびその代謝物の定量法を確立することが重要となる。これまで、HPLCを用いて、nicotine, 5’-hydroxynicotine, cotinine濃度測定システムを確立している。また、TLCを用いた簡便なnicotine代謝物の濃度の半定量方法も確立しつつある。今年度は、この半定量方法が確立し、ヒト唾液を用いてnicotine代謝物の濃度比より代謝酵素活性の推定の検討を行い、限定的ではあるが、nicotineおよびその代謝物の存在を確認することができた。 加えて、AO活性が約3倍異なる系統のラットにCYP2A6活性阻害であるmethoxsalenを投与することで、AO活性およびCYP2A6活性を調節できる動物モデルを作成している。さらに、本モデルにnicotineを尾静脈投与し、その血液サンプルも採取済である。今後、採取済の血中nicotine濃度を測定し、nicotineの体内動態に及ぼすAO活性およびCYP2A6活性の影響を検討する予定である。 従って、おおむね順調に研究が遂行していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
来年度は以下の項目を中心に検討を行う予定である。 ①ヒト唾液を用いたnicotineおよびその代謝物の半定量法を確立した上で、唾液サンプル(喫煙者6名、非喫煙者6名を予定)を用いて詳細な半定量の精度確認を行う。加えて、尿中に排泄された生体内物質より、各酵素活性を推定した上で、適切なnicotine製剤の投与量について検討を行う。 ②作成した動物モデルを用いて血中nicotineおよびその代謝物濃度を測定し、nicotineの体内動態に及ぼすAO活性およびCYP2A6活性の影響を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度、nicotineおよびその代謝物の半定量を重点的に行った。来年度は多くの被験者に対し、測定を行うため費用が必要である。加えて、動物モデルを用いて、AO活性およびCYP2A6活性がnicotine代謝に及ぼす影響も検討するための費用も必要となる。
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