研究実績の概要 |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者は、情動障害・認知機能障害などの中枢性合併症が易発症である。本申請者は、重症COPDモデル動物で血液脳関門(BBB)障害が発現することを突き止めた。このBBB機能低下は、脳神経障害および薬剤に対する脳脆弱化・中枢性副作用易発症の起因となる。本研究では、BBBを「COPD病態感受性機関」として捉え、COPDによる血液中serum amyloid A (SAA)とlipoxin A4の変動及びこれらの受容体であるALX/FPR(formyl peptide receptor) を介した脳ペリサイトの応答に着眼し、COPD病態進行に連動したBBB障害機構を明らかにする。これを基盤として、COPDの中枢性合併症・薬剤中枢性副作用の発現機序とその防御法を追究する。 本年度は脳ペリサイトのSAAに対する応答性を明らかにするため、human SAAを6時間処理したヒト脳ペリサイトの遺伝子発現変動を、マイクロアレイを用いて網羅的に解析した。SAA処理によってケモカイン類(CCL26, CCL20, CXCL1, CXCL2, CXCL3, CCL2, CXCL6, CXCL8)およびcholecystokininの発現量が著しく上昇していた。また、IL-6, ICAM-1およびVEGFも増加していた。一方、SAAおよびlipoxin A4の受容体であるALX/FPR発現量に著明な変動は認められなかった。これらのSAAによって発現量が増加した分子群は、BBB機能低下を誘発する因子を多く含み、COPD病態下での脳ペリサイトのSAA応答によるBBB機能障害発現に寄与することが推察される。
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