研究課題/領域番号 |
16K08429
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研究機関 | 福岡大学 |
研究代表者 |
片岡 泰文 福岡大学, 薬学部, 教授 (70136513)
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研究分担者 |
道具 伸也 福岡大学, 薬学部, 准教授 (60399186)
高田 芙友子 福岡大学, 薬学部, 助教 (70412575)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 脳ペリサイト / 慢性閉塞性肺疾患 / Serum amyloid A / 血液脳関門 / サイトカイン |
研究実績の概要 |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者は、情動障害・認知機能障害などの中枢性合併症が易発症である。本申請者らは、COPDモデル動物において、肺組織障害や酸素分圧低下と並行して、血液脳関門(blood-brain barrier; BBB)の機能障害が発現することを突き止めた。本研究では、COPD進展に伴うserum amyloid A (SSA)とLipoxin A4 (LXA4)の変動及びこれらの受容体ALX/FPR(formyl peptide receptor)を介した脳ペリサイトの機能変容に着眼し、COPD病態進行に連動したBBB障害機構の解明を企てた。 前年度(H28年度)は、脳ペリサイトのSAAに対する応答性を明らかにするため、マイクロアレイを用いた網羅的解析を行った。その結果、SAA処理によって脳ペリサイトのサイトカイン/ケモカイン類及び血管新生因子等の発現量が上昇することが判った。 本年度も、前年度に引き続き細胞実験を継続した。マイクロアレイ解析により同定したBBB機能調節因子のmRNA発現量の変化をRT-PCRを用いて、より詳細に定量した。ペリサイトのSAA処理により、BBB障害因子(TNF-α, IL-1β, IL-6, MMP-9)のmRNA発現量が有意に増加した。また、ペリサイトのBBB保護因子(TGF-β, HGF, artermin)も、SAA処理により有意に上昇することが判った。 本年度からは、COPDモデル動物の行動実験も開始した。これまでの研究でCOPDモデル作製3週間後にBBB障害の発現が認められたので、COPD作製3及び6週後にオープンフィールド試験を実施した。COPD作製6週間後で、COPD群の自発運動量が対照群と比較して減少傾向を示した。これら行動学的変動とBBB破綻との相関性も含めた総合的解析が必要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイクロアレイ解析の結果を基にBBB機能調節に関する候補分子の探索を完了した。また、COPDモデル動物の行動試験も開始した点で順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、SAAがペリサイトのBBB機能調節因子をmRNAレベルで上昇することを明らかにした。今後は、タンパク質レベルでも同様の実験を行うとともに、in vitro BBBモデルを用いてCOPD病態関連因子の脳血管内皮細胞障壁能に対する影響を検討する。また、in vitro BBBモデルから得た実験結果と本年度得られた実験証拠を総合的に判断し、SAA刺激脳ペリサイト-脳血管内皮細胞間の調節因子の同定を試みる。 動物実験においては、本年度実施した行動実験を継続し、実験例数を追加する。さらに、COPD作製3週後および6週後で、行動実験およびBBB障壁能 (3H-Sucroseおよび14C-四級アンモニウム塩透過性)の評価を行い、神経症状・行動異常及びBBB機能障害発現との関連性について検討を行う。また、本モデル動物に四級アンモニウム塩であるチオトロピウム(COPD治療薬)を投与し、オープンフィールド試験を行い、COPD病態下におけるチオトロピウムの中枢性副作用について検討を行う。
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