研究実績の概要 |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)患者は、情動障害・認知機能障害などの中枢性合併症が易発症である。本申請者らは、COPDモデル動物において、肺組織障害や酸素分圧低下と並行して血液脳関門(blood-brain barrier; BBB)の機能障害が発現することを突き止めた。本研究では、COPD進展に伴うserum amyloid A (SSA)の変動及びその受容体を介した脳ペリサイトの機能変容に着眼し、COPD病態進行に連動したBBB障害機構の解明を企てた。 前年度は、脳ペリサイトのSAA処理により、BBB障害因子(TNF-α, IL-1β, IL-6, MMP-9)のmRNA発現量が増加することを明らかにした。本年度も前年度に引き続き細胞実験を継続した。SAA刺激脳ペリサイトにおけるBBB障害因子の産生機構を解明するため、SAAとその受容体阻害剤を脳ペリサイトに処理し、BBB障害因子のmRNA量をRT-PCRを用いて定量した。その結果、脳ペリサイトにおけるSAA誘発性BBB障害因子の産生機構にTLR4が重要な受容体として関与することが判った。今後は、FPR2やTLR2など他のSAA受容体の役割を検討し、脳ペリサイトのSAAに対する免疫応答変容の全貌に迫る。 また、in vitro BBBモデルを用いた脳血管内皮細胞の障壁能に対する影響についても検討した。SAAが脳血管内皮細胞の血管透過性亢進(TEER値の低下およびNa-F透過係数の増加)と密着結合関連タンパク質であるoccludinのタンパク質発現量を減少させることを明らかにし、SAAがBBB障害作用を有する可能性を提示した。 今後は、COPD病態におけるSAA変動、BBB障害および脳ペリサイト病変化の関連について追究し、SAAを機軸にしたCOPD病態進行とBBB障害の連動機構を明らかにする。
|