研究課題/領域番号 |
16K08433
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
佐井 君江 国立医薬品食品衛生研究所, 医薬安全科学部, 室長 (20195960)
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研究分担者 |
今任 拓也 国立医薬品食品衛生研究所, 医薬安全科学部, 主任研究官 (20368989)
堀 雄史 浜松医科大学, 医学部附属病院, 薬剤師 (20436786)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | データベース / 重篤副作用 / リスク因子 |
研究実績の概要 |
(目的)本研究は、各種ビッグデータを用いて免疫機序の関与が示唆される3種の副作用(薬物アナフィラキシー、重症薬疹、薬物性肝障害)について、各医薬品(及び薬効群)別に、免疫修飾要因を主とする患者背景因子との関連性を明らかとすることを目的とする。本年度は、日本の重症薬疹症例研究より得られた感染影響の知見を基に、世界保健機構(WHO)の副作用報告データベース(DB)を用いて、免疫修飾要因として感染治療薬併用を指標に、全医薬品ならびに主要な医薬品群を対象に、感染併発による副作用発症への影響について探索的解析を行った。(方法)WHOの副作用報告DB(Vigibase)の日米欧の報告データ(2007年~2016年)を用いて、薬物アナフィラキシー、重症薬疹及び薬物性肝障害を対象に、感染症治療薬が被疑薬または併用薬である場合を感染「有」と定義し、全医薬品、解熱鎮痛薬処方群及び抗てんかん薬処方群について、感染「有」の割合およびオッズ比を解析した。(結果)日本の副作用報告では、重症薬疹(36.9%)、薬物性肝障害(29.5%)、薬物アナフィラキシー(33.6%)の感染「有」群の割合は、全副作用報告における割合(23.2%)よりも高く、また、感染「有」のオッズ比についても、3種の副作用では有意に高かった。さらに、解熱鎮痛薬処方群および抗てんかん薬処方群においても、正の相関が認められたが、特に解熱鎮痛薬処方群の重症薬疹では、この関連が強かった。これらの傾向は、米国および欧州における副作用報告データでも確認された。(まとめ)本年度の各国の副作用報告データを用いた探索的解析から、3種の免疫関連副作用と感染併発との関連が示唆され、特に解熱鎮痛薬による重症薬疹において、感染併発が重要なリスク要因である可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、日本の重症薬疹症例に関する解析から、感染併発と重篤度との強い関連が認められたことから、さらに大規模なDBを用いた医薬品群別の特性解析、ならびに次年度計画としていた国・地域差に関する予備解析も行うこととした。そのため、WHOの副作用報告DBを用いて、感染症治療薬を指標とする探索的な解析を実施した。その結果、対象とした副作用に関しては、何れも感染併発の割合が高いことが、日米欧の各地域に共通して認められ、また特に感染影響が強いことが示唆される医薬品群と副作用に関する知見も得られた。これらは、次年度以降の研究デザインを構築する上で有益な知見であると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
1. 副作用DBを用いた解析 本年度の知見を基に、引き続き、日本及び各国の副作用報告DBを用いて、3種の免疫関連副作用について、原疾患等の種々の背景因子を含む詳細なリスク要因の解析、および感染影響の評価を行う。また、特に本年度の解析で感染影響の強い関連が示唆された解熱鎮痛薬や、抗てんかん薬を中心に、医薬品群別のリスク因子の特性解析ならびに国・地域間差に関する解析を実施する。
2. 医療情報DBを用いた解析 さらに、医療情報DBを用いた評価を実施するため、浜松医大のDBを用いて副作用検索式を構築し、これを用いて代表的な医薬品群を対象に、感染併発による副作用発症頻度への影響を検討する。各副作用の発症に関わる免疫修飾要因及び他の患者背景因子の寄与を、背景(年齢、性別、原疾患、等)、対象医薬品、免疫修飾要因を含むロジスティック回帰分析等にて、定量的に評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた学会参加の変更、予定していた物品購入費用が予定より低価となったことから、残額は次年度の調査研究費に使用することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は、研究打合せの旅費、成果発表のための学会参加や出張旅費、関連研究の文献調査ならびにデータ処理作業のための人件費に使用する予定である。
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