先天性膣欠損症は不妊の原因になる。しかしながら、先天性膣欠損症の病態解析や膣発生機構に関する知見は非常に少ない。本研究は、Cxxc5欠損マウスの膣形成不全がどのような細胞、分子メカニズムで発症するのかを解析することで、Cxxc5が関与する膣発生分子機構を明らかにすることを目的とした。 平成28年度に実施した解析により、Cxxc5は膣原基である中腎傍管と、中腎傍管より先に形成され中腎傍管形成に関わる中腎管で発現していることが分かった。よってCxxc5欠損マウスの膣形成不全の発症機構は、膣原基である中腎傍管そのものにおけるCxxc5機能欠損が原因である可能性と、中腎管におけるCxxc5機能欠損が原因である可能性が考えられた。そこで、平成29年度は、中腎傍管特異的Cxxc5欠損マウスと中腎管特異的Cxxc5欠損マウスを作成し、それらの表現型をCxxc5欠損マウスの表現型と比較した。中腎傍管特異的Cxxc5欠損マウスは、雌雄ともに中腎傍管の伸長が下端到達寸前に停止し、雌は膣形成不全を示すことがわかった。一方、中腎管特異的Cxxc5欠損マウスは、雌雄ともに中腎管と尿管の下部共通管が残存するが、雌は正常に膣が形成され生殖可能であることがわかった。以上の結果から、中腎傍管で発現するCxxc5が膣形成に必要であることが明らかとなった。 今後は、中腎傍管で発現するCxxc5がどのような分子機構で中腎傍管伸長を制御しているのか、Cxxc5の標的分子を明らかにする。レーザーマイクロダイセクションによる組織の正確な切り出しや、RNA-シークエンスによる全転写物の定量について、条件検討を開始している。
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