研究課題/領域番号 |
16K08437
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
目黒 玲子 新潟大学, 医歯学系, 教授 (30251804)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | クラスター型プロトカドヘリン / 視神経 / 生後発達 / Shivererマウス |
研究実績の概要 |
クラスター型プロトカドヘリン(cPcdhs)は、神経細胞に特異的に発現する、細胞接着に関わるタンパク質である。α、β、γの3つのタイプがあり、それぞれにはサブタイプが20種類前後ある。これらをコードする遺伝子は、同一遺伝子上で直列配置し、細胞ごとにランダムに15種程度発現している。よって、15種の組み合わせは100億パターンにもおよび、これが神経細胞の個性を表出している。しかしながら、この機能的意義について、同じ細胞由来の樹状突起同士の反発・忌避作用、親和性の強弱によるシナプス接着調節、などが示唆されているが、いまだ明確ではない。 われわれは、αタイプ(cPcdhα)ノックアウトマウスの成体で、視神経終末の形態異常、ならびにこの異常が生後3週頃から生じることを報告しているが、本研究において、生後3週頃までの視神経発達とcPcdhαとの関わりについて検討した。生後2週期には視神経においては「髄鞘化」が進行することが知られており、かつ先行研究で生後2週期の髄鞘形成不全マウス(Shivererマウス)の視神経に、非常に多くのcPcdhαが分布することが報告されている(Morishita et al. 2004)ことから、Shivererマウスを用いた実験をおこなった。Shivererマウスの視神経および神経終末域において、生後2週-3週の間に、コントロールマウスと比べて発現の異なる物質を免疫組織化学的に検索した。その結果、マイクログリアマーカーIba1が、視神経および視索において、著しく増強していることがわかった。マイクログリアの機能については古典的には貪食作用であるが、最近では神経細胞の活動調節の役割も担うと報告されている。神経細胞のcPcdhαが、マイクログリアとの機能連関に何らかの役割を演じている可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究目的であるクラスター型プロトカドヘリン(cPcdhs)の機能の解明について、生後発達の観点から検討したところ、神経回路の成熟過程のひとつである「髄鞘化」の段階で、視神経および視索レベルで、何らかの役割を担う可能性が示された。神経終末部における働きに関しては、髄鞘機能不全マウスの視神経終末のトレーサー標識実験からは形態的異常は認められず、機能と直結する興味深い所見はまだ得られていない。また、cPcdhsのαタイプ(cPcdhα)のコンディショナルノックアウトマウスを用いた、細胞腫特異的・時期特異的にcPcdhαを除去した場合の、視神経終末の形態異常の検証については、このノックアウトマウスの供給不足のため、進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
生後発達期の神経回路の成熟過程で重要な「髄鞘化」の段階で、クラスター型プロトカドヘリン(cPcdhs)が何らかの役割を果たす可能性が、先天性髄鞘不全マウス(Shivererマウス)を用いた実験から得られた。今後は、このマウスを用いた研究を重点的におこなう。すなわち、引き続き、連携研究者よりShivererマウスの供与を受け、cPcdhαが増強している「神経線維」、髄鞘化不全を起こしている「オリゴデンドログリア」、細胞数増加の認められた「マイクログリア」の関わりを明らかにする。この3者について、生後2週齢から3週齢のShivererマウスを用いて免疫組織学的検索をおこなう。視覚系においては生後14日頃の「開眼」が髄鞘化と深い関連があることが知られているため、実験的「閉眼」による影響についても調べる。ノックアウトマウスを用いた実験は動物が供給され次第行うが、主軸は、Shivererマウスを用いた実験の方に置く。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) コンディショナルノックアウトマウスの供給が不足したため、動物維持費や薬品等の支出が抑えられた。免疫組織化学的染色標本の画像解析用のパソコンは、選定に迷い、導入に至らなかった。 (使用計画) 次年度は、引き続きShivererマウスを用い、生後各発達段階での免疫組織化学的解析を主とした実験をおこなう。よって、当該助成金および翌年度分助成金は、実験動物の維持管理費、手術器具、組織化学用薬品、ガラスおよびプラスチック器具、コントロール実験のための野生型マウスなど物品費に使用する。また、高解像度の顕微鏡画像を得るための光学顕微鏡、画像解析用のパソコン、ソフトウェアを購入する。学会発表・情報収集のための出張旅費にも用いる。
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