研究課題
1「ヒト多能性幹細胞より形態形成を再現する条件の検討」1-a. 背側中胚葉の上皮間葉転換を再現する条件の検討:ヒト多能性幹細胞にWntシグナル賦活化処理を加えると上皮間葉転換を引き起こす。上皮間葉転換の詳しい条件を明らかにするため、Wntシグナル賦活化処理と上皮間葉転換のタイミングの関係について調べ、Wntシグナルの強さの違いが上皮間葉転換のタイミングを決めることが示された。 1-b. 神経管の形態を再現する条件の検討:ヒト多能性幹細胞にBMPシグナル阻害およびアクチビンシグナル阻害処理を加えると神経分化を引き起こす。同様の方法で誘導した神経幹細胞の細胞塊を播種することにより、神経管様の構造である「ロゼット」を作成した。2「組織分化パターンの解明」2-a. 背側中胚葉の細胞分化の検定:分化度の異なる2種の細胞塊の共培養は異種細胞の境界付近に方向性のある細胞分化の差、すなわち「組織極性」をもたらし、それが中胚葉組織の伸長運動を引き起こす。組織極性の形成を確認するため、細胞の分化状態を検討した。Wntシグナル賦活化処理条件を変えることにより、未分化マーカーであるNanog, Sox2上皮マーカーであるE-cadherinと中軸マーカーであるFoxA2がそれぞれ異なる発現パターンを示すようになり、分化の程度が異なることが示された。このことより、ヒト背側中胚葉の伸長形態形成再現系において、組織極性に関する様々なマーカーを使えるめどがついた。 2-b. 神経管様構造の分化・組織パターンの確認:神経細胞マーカーであるPax6と幹細胞・神経細胞マーカーであるSox2の発現により、神経幹細胞分化を確認した。また、タイトジャンクションマーカーであるZO1および有糸分裂マーカーであるPHH3によりロゼット構造の極性を確認した。
3: やや遅れている
「ヒト多能性幹細胞より形態形成を再現する条件の検討」については上皮間葉転換再現する条件をほぼ設定し、さらに神経ロゼットの構造を再現という予定以上の成果を挙げている。また、「組織分化パターンの解明」については様々なマーカーで細胞分化および組織極性をほぼ確認している。したがって、これらの項目についてはおおむね順調に進展しているといえる。しかし一方で「細胞内局在因子の解析」や「細胞挙動の解析」については成果に乏しく、遅れている。以上のことから、全体としてはやや遅れているといえる。
組織極性の確認を完遂する。また、Actin、Myosin、aPKC等細胞極性因子の局在を明らかにし、阻害剤等によりこれらの因子の形態形成における働きを調べる。さらに形態形成時の細胞運動や有糸分裂時の細胞の挙動を明らかにする。これらの研究によりヒト初期発生にける形態形成の仕組みを解析する。
次年度研究費の理由:「細胞内局在因子の解析」や「細胞挙動の解析」がやや遅れているため次年度研究費の使用計画:組織極性の確認を完遂し、細胞内局在因子や細胞の挙動を明らかするための細胞培養、分子生物学、組織学、およびイメージング解析に研究費を使用する。
すべて 2018 2017 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件) 備考 (1件)
Chemosphere
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