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2016 年度 実施状況報告書

Sema4Dによるオリゴデンドロサイトとミクログリアの発達制御機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 16K08442
研究機関大阪大学

研究代表者

稲垣 忍  大阪大学, 医学系研究科, 教授 (90151571)

研究分担者 土江 伸誉  兵庫医療大学, 共通教育センター, 講師 (00434879)
研究期間 (年度) 2016-04-01 – 2019-03-31
キーワードオリゴデンドロサイト / ミクログリア / 発達 / Sema4D
研究実績の概要

中枢神経系においてオリゴデンドロサイト(OL)は髄鞘形成細胞で、ミクログリア(MG)は内在性の免疫細胞である。私達はこれまでに、Sema4D欠失が大脳皮質におけるOLの発達を促進することを報告してきたが(Yamaguchi et al, EJN 2012)、その機序は未だ不明である。成体脳虚血モデルでは頭頂葉皮質の梗塞近傍領域におけるMGの強い活性化がSema4D欠失により緩和され(Sawano et al., Glia 2015)、虚血傷害からのOLの回復が亢進した(Wada et al., NsR 2016)ことから、MGの活性化緩和とOLの回復促進が関連する可能性が示唆された。そこで発達期大脳皮質のMG発達に対するSema4D欠失の影響を検討した。 1)生後発達期の頭頂葉一次知覚野MGの発達に対するSema4D欠失の影響を調べた。 iba1陽性MGの数は生後著しく増加し、14日齢でピークとなったが、Sema4D欠失による影響は見られなかった。生後しばらくはMGの形態は成体とは著しく異なり、成体活性化MGに類似したアメボイド様を示す。次に、MGの活性化に及ぼすSema4D欠失の影響を調べるため、活性化の指標として、脳梗塞傷害動物でSema4D欠失マウスで有意に低下していたiNOS発現について調べた。生後発達期中、大脳皮質ではほとんどiNOS陽性細胞を検出できなかった。そこで別の活性化(貪食)マーカーであるCD68を活性化の指標として検討した。iba1陽性でCD68強陽性の活性化MGは大脳皮質ではほとんど検出できなかったため、iNOSと同様に活性化の緩和についての検討ができなかった。生後発達期の頭頂葉皮質のMGは形態的には活性型を示すが、iNOSや強いCD68の発現はほとんど見られないことから、成体の脳梗塞傷害モデルで見られたMGの活性化とは異なることが確認できた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

実験の解析結果を統計処理に必要な、同腹で日齢が同じ、野生型とホモKO型の、十分な数のマウスが予定通り生まれなかったこと、使用できることを期待していたミクログリア活性化マーカーなどのうちいくつかが期待通り使用できなかったため追加の購入が不要になったこと、担当していた進学予定の学生が進学しなかったこと、などの理由のため研究がやや遅れている。生後発達期大脳新皮質頭頂葉におけるオリゴデンドロサイトとミクログリアの関連性について調べた。どちらのグリアも生後著しく細胞数が増加する。オリゴデンドロサイトの発達に対してSema4D欠失は細胞数増加の促進作用を示した。一方、ミクログリア数の増加に対しては有意差が見られなかった。また、発達期や健常な大脳皮質ではiNOSやCD68発現による活性化ミクログリアの検出は困難であったことから、傷害による成体大脳皮質のミクログリア活性化と発達期におけるミクログリア活性化は質的に異なり、Sema4D欠失によるミクログリア活性化への影響を検討するためには新たな計画を要することが判明した。

今後の研究の推進方策

前述したように発達期における大脳皮質頭頂葉ミクログリア活性化は成体傷害モデルにおけるミクログリア活性化と異なったことから、1)ミクログリア活性化の質的違いの検討を行なう必要がある。生後発達期のおける大脳皮質におけるミクログリアの数の増加は14日齢でピークとなり、成熟オリゴデンドロサイトの増加のピークは28日齢あるいはそれ以降でピークとなることから、ミクログリアの発達がオリゴデンドロサイトの成熟より先行すると考えられた。これまで脳におけるSema4Dの発現は主にオリゴデンドロサイトであることを報告してきたが、2)活性化ミクログリアの発現についても検討する。また、成体脳のミクログリアの分布はほぼ均一であるが、発達期脳における分布は一様ではなく、不均一である。今後は2)大脳皮質以外に、生後7日齢の外包近傍の活性化の強いミクログリア群や神経繊維束である脳梁でのミクログリアの発達や活性化へのSema4D欠失の影響を検討する。

次年度使用額が生じた理由

マウス実験群を統計上有為に処理するためには各10匹ずつの遺伝子背景、日齢、手術群、非手術あるいはsham手術群とそろえる必要があるが、予定通り生まれなかったため、行動実験ができなかった。担当していた進学予定の学生が進学しなかったため、培養実験が順調に進められなかったため物品費の購入が少なくなった。研究発表などの旅費を申請していたが、教育業務と重なり、見送ったため。その他に英文論文校正と論文投稿費を予定していたが、大学の支援を受けたり、投稿費のかからない英文雑誌に投稿できたため。

次年度使用額の使用計画

次年度は新たなミクログリア活性化マーカー、ミクログリアやオリゴデンドロサイトなどの前駆細胞や幹細胞マーカーの購入、幹細胞や前駆細胞は培養が容易であるのでこれら前駆細胞からの分化実験をおこなうための初代培養や幹細胞培養培地やサプリメント、種々のディスポの培養器具、発達期特異的なミクログリア活性化指標の同定のために抗体に加えRT-PCRによるmRNA定量のために、mRNA抽出や酵素、検出試薬等を用いた実験を計画しており、これらの購入を予定する。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Homology analysis detects topological changes of Iba1 localization accompanied by microglial activation2017

    • 著者名/発表者名
      Sawano T, Tsuchihashi R, Morii E, Watanabe F, Nakane K, Inagaki S
    • 雑誌名

      Neuroscience

      巻: 346 ページ: 43-51

    • DOI

      10.1016/j.neuroscience.2016.12.052.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] 単球におけるSema4Dの機能解析2017

    • 著者名/発表者名
      山口 航、眞鍋 紀子、古山 達雄、稲垣忍
    • 学会等名
      第122回日本解剖学会 総会・全国学術集会
    • 発表場所
      長崎大学 (長崎県 長崎市)
    • 年月日
      2017-03-29
  • [学会発表] Homology理論を用いたMicroglia活性化指標の提案2016

    • 著者名/発表者名
      澤野俊憲, 土橋遼, 渡邉文也, 森井英一, 中根和昭, 稲垣忍
    • 学会等名
      第17回ORIGIN 神経科学研究会 夏のワークショップ
    • 発表場所
      まつや千千 (福井県あわら市)
    • 年月日
      2016-08-28

URL: 

公開日: 2018-01-16  

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