研究課題
全前脳胞症はヒトの前脳と顔面正中部が形態異常になる先天性奇形で、遺伝的原因として幾つかの染色体遺伝子座が明らかになりつつあるが、その発症機序はよくわかっていない。代表者はBMPシグナルを抑制して神経を誘導するBiz (BMP inhibitory zinc finger)/zbtb14を単離した。興味深いことに、Biz/zbtb14と、その結合因子(Biz associated protein, Bap)、それぞれが全前脳胞症の原因遺伝子座に位置する。本研究は神経形成におけるBiz/zbtb14とBapの機能的な相互作用、およびBMP・Wntシグナルネットワークに対する作用機序を解析し、全前脳胞症発症機構の解明を目的としておこなった。Biz/zbtb14とBapの過剰発現実験をおこない、Biz/zbtb14単独に比べて、Biz/zbtb14とBap両遺伝子を共発現させた場合に後方神経マーカーの発現が、より強く誘導されるだけでなく、前方神経マーカーOtx2やRx2Aの発現領域が縮小することがわかった。これらの結果から、前後軸形成においてBap遺伝子はBiz/zbtb14と協調的にはたらく事がわかった。また、表皮マーカーの発現も同様に、Biz単独に比べてBap共存下の方が、より激しく減少し、Bapは前後軸形成に対してだけでなく背腹軸に及ぼすBiz/zbtb14の効果も強めることが明らかになった。さらにBap機能阻害実験を行ったところ、後方神経マーカーの発現が低下する一方で前方神経マーカーOtx2やRx2Aの発現領域が拡大することがわかり、過剰発現実験の結果を裏付けることが明らかになった。以上の結果から、Bap は初期胚の神経形成に必要不可欠であり、Biz/zbtb14と協調して前方神経の抑制と後方神経の形成促進に関与することが強く示唆された。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (20件) (うち国際学会 5件、 招待講演 3件) 備考 (3件)
Development, Growth & Differentiation
巻: - ページ: -
巻: 60 ページ: 158~173
10.1111/dgd.12431
https://home.hiroshima-u.ac.jp/amphibia/Suzuki/suzukitop.html
https://researchmap.jp/read0066634
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