研究課題/領域番号 |
16K08446
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
藤倉 義久 大分大学, 医学部, 教授 (10165368)
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研究分担者 |
伊奈 啓輔 大分大学, 医学部, 准教授 (20203193) [辞退]
千葉 政一 大分大学, 医学部, 助教 (20457633)
北村 裕和 大分大学, 医学部, 客員研究員 (70115559)
松村 譲兒 杏林大学, 医学部, 教授 (90173880)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | フォルムアルデヒド(FA)代替液 / N-Vinyl-2-pyrrolidinone / プリザーブ液 / ご遺体の固定・保存液 |
研究実績の概要 |
フォルムアルデヒド(FA)は発癌性物質に分類され、労働作業環境や作業者の健康診断など厳しい規制が敷かれている。しかし解剖学領域において 組織固定液、臓器保存液、ご遺体の固定・保存液として依然として汎用されているが現状である。我々は今までに親水性高分子モノマーであるN-Vinyl-2-pyrrolidinone(NVP)を用いて組織固定液、臓器保存液として有用なことが報告しており、またNVP濃度5%以上で狂犬病ウイルス、黄色ブドウ球菌、大腸菌、枯草菌を不活化し、20%以上でカビを溶融できることを明らかにしてきた。このNVPを主成分としたプリザーブ液の使用上の ① 安全性の詳細な確認、② 用途の改良並びに拡大について基礎研究(ラット使用)と臨床研究(ご遺体使用)を行うことを目的とした。 ①安全性の詳細な確認:献体されたご遺体の防腐処置を行う術者の安全確保のための対策として、まずご遺体の病歴をよく確認する。またご遺体から採血し、B型肝炎、C型肝炎、AIDSウイルス、ATLウイルス迅速血液検査を行い、これらが陰性のご遺体について研究(NVP)を行った。また、献体直後のご遺体の体液、浸出液を培養し細菌検索を行い、数ヵ月後の解剖時にも同部位からの試料を採取し検索・比較検討した。 ②用途の改良並びに拡大:プリザーブ液の組成を多様化することで軟らかいご遺体、ある程度硬さを保ったご遺体の2つのタイプを作成できれば系統解剖、局所解剖、外科手術修練等に適したご遺体を用意できると考え、プリザーブ液中のNVP濃度のみならず、EtOHやNaCl濃度も調節した。肩関節、膝関節等は良好な結果が得られたが、脳は未だ軟らかく、総頚動脈から過剰にやや高めの濃度のNVPを注入し外科手術修練に適した状態が出来つつある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①安全性の詳細な確認:ラットを使用した予備実験結果は比較的良好なものであった。ヒトでは前述4種のウイルスについてはもともと陰性であった。解剖時の消化管内容物の血液寒天培地で好気性培養と嫌気性培養を行った結果は希に陽性コロニーをみることもあり、基礎実験も含め事実か技術的なアーテイファクトなものか更に症例を増やしていく予定である。 本研究の一部は A new substitute for formalin : Application to embalming cadavers. Haizuka et al., Clinical Anatomy, 31:90-98, 2018. に報告した。 ②用途の改良並びに拡大:ラットにエチルアルコール(EtOH)やNaClを適度に添加したNVPを注入すると内臓にある程度の硬さを持った屍体が用意できた。しかしEtOH添加では臭気が強く未だ問題解決には至っていない。 一方、本学倫理委員会に申請した結果は昨年の本報告書に記載した状況と変わらず、依然として医学部長から許可は降りていない。その理由は、①NVPの処置者への安全性、②献体者への生前同意を得ること、および各大学の倫理委員会の承認を得ること、③NVP注入ご遺体を火葬場で焼却して頂けるかどうか、である。現在も以上を解決すべく努力している。
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今後の研究の推進方策 |
医学部長の許可が得られないと研究できない状況に陥っており、「7.現在までの進捗状況」に記載した3つの不許可理由をクリアーするのは非常に困難である。特に本人の生前同意はほぼ不可能と言っても良いくらいである。今後は杏林大学において献体者への注入研究を行い、完全フォルマリン代替液に興味を示している久留米大学、弘前大学、広島大学、山口大学等で指導を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬価格の値上がりで購入調整がうまくいかず残額が発生した。来年度分に繰り越し、消耗品の購入に充てる。
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