複雑な脳神経系において機能的な神経回路が形成されるためには、標的細胞への神経軸索の正確な投射が必要である。この過程を制御する分子として軸索ガイダンス分子が存在し、セマフォリン、スリット、エフリン、ネトリンが同定されている。これらの分子がどのように神経回路形成に関与しているかという分子機構ははまだあまり研究が進んでいない。主として反発性軸索ガイダンス分子として機能するセマフォリンに注目して研究を進めている。本研究の目的は、神経回路形成及び高次脳機能におけるセマフォリンの機能を解明することである。セマフォリンは当初軸索ガイダンス分子として同定され、神経系での研究が進んできた。その後の研究によりセマフォリンは約30種類同定されており、セマフォリンはウイルスからヒトに至るまでの生物に存在する。セマフォリンは神経系以外でも免疫系、癌発生、血管形成、骨形成等に関与しており、創薬のターゲット分子となり得る分子である。 以前マウスにおいて新規セマフォリンであるSema3Gのクローニングに成功した。現在は、特にSema3Gに注目して研究を進めている。Sema3Gは神経系の研究がほとんど進んでいない。Sema3Gは成体脳において主に小脳の顆粒細胞層と海馬に発現している。Sema3Gの機能解析が本研究課題の最大の目的である。Sema3Gの機能解析を行うためにノックアウトマウスを作成した。現在はノックアウトマウスを使用して形態学的解析と行動学的解析を主に行っている。形態学的解析では様々な抗体を使用した解析を海馬と小脳に対して行ったが、現在の所明らかな異常はまだ見付けられていないので、抗体の種類と染色法を増やして解析を続けているところである。行動解析に関しては、現在解析中である。ある程度の変化は認められるが現在詳細な解析を継続中である。
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