研究課題/領域番号 |
16K08450
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
中島 裕司 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 教授 (80207795)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 心臓形態形成 / 冠状血管形成 / 起源 / メカニズム |
研究実績の概要 |
冠状血管内皮細胞の起源については、静脈洞内皮細胞、原始心外膜、心室心内膜等が報告されている。本研究の目的の第一は鳥類胚心臓を用いて冠状血管内皮細胞の起源を明らかにすることである。ウズラニワトリキメラ、蛍光色素標識、EGFP-TOL2システムを用いて検討を行った。その結果、冠状動脈主幹部を含め、心室自由壁の冠状血管内皮細胞は静脈洞内皮細胞に由来し、心室中隔の冠状血管内皮細胞は心室心内膜に由来することが示された。一方、原始心外膜由来の細胞は冠状血管平滑筋を供給した。以上の結果から静脈洞と心室心内膜は単一の細胞ではなく心内膜細胞と冠状血管内皮前駆細胞で構成されていることが明らかになった。一方、成人の心内膜における冠状血管前駆細胞の存在は不明であるため成人心内皮における前駆細胞の存在を明らかにできれば、虚血性心疾患の新たな治療開発に展開できる。 冠状動脈の発生過程では、大動脈と肺動脈周囲に形成された毛細血管網から血管内皮細胞索が大動脈に選択的に侵入し冠状動脈主幹部を形成する。この過程で肺動脈に冠状動脈内皮細胞索は侵入しないがその機構は不明である。この発生障害は冠状動脈異所性起始といった先天性心疾患を起こす。本研究の第二の目的は冠状動脈主幹部が選択的に大動脈に繋がる機構を明らかにすることである。冠状動脈形成時期の肺動脈と大動脈からmRNAを抽出しRNAシーケンスを行い発現に差がある遺伝子を検索した。その結果、大動脈で高く肺動脈で低い発現を示す遺伝子Aを見出した。遺伝子Aの作用を明らかにするため冠状動脈主幹部形成過程を模倣する培養系を確立した。この培養系では内皮細胞索が大動脈壁に向かって選択的に侵入することが示されたため、冠状血管形成のメカニズム明らかにする上で様々な研究に応用することができる。本研究では確立した培養系を用いて遺伝子Aの冠状動脈形成にかかわる機能を明らかにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
冠状血管内皮細胞の起源に係る研究では冠状血管の分布領域によってその起源が静脈洞、心室と異なっていることが明らかになった。この結果は従来の鳥類胚心臓で得られたの結果と異なり新知見を得ることができた。この結果は平成28年度解剖学会近畿地方会および全国大会で発表した。 また冠状動脈主管部形成にかかわる分子メカニズムの探索では1回目のRNAシーケンスで結果を得ることができ、当初予定より1年先行した。そのため培養モデル確立に着手することができ、発生中の冠状動脈形成領域で起こっている過程を模倣する三次元培養系を確立することができた。
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今後の研究の推進方策 |
冠状血管内皮細胞の起源の研究については29年度に開催される国際発生生物学会で発表を行い、可及的すみやかに論文作成を行い成果を公表する。 冠状動脈主幹部が選択的に大動脈に形成されるメカニズムの検討では、RNAシーケンスで同定した遺伝子Aの機能について確立した培養系を用いて機能阻害実験、機能獲得実験を行い検証する。機能阻害実験には中和抗体、機能性抑制因子、合成siRNA、化学的阻害剤を使用してテストを行う。機能獲得実験にはリコンビナント蛋白、遺伝子A発現ベクターを導入した培養細胞の共培養によって実施する。また、これらの機能阻害、獲得実験は冠状血管形成期の胚を対象にin vivo (ovo)でも実施する。この際、リコンビナント蛋白、阻害物質ほはAGX1、AFFI-BLUEビーズ等に含浸させ、実態顕微鏡下で局所投与を行う。また遺伝子Aの発現については、免疫組織染色、インサイチュハイブリダイゼーション、定量的PCR法(外注工作)によって特に冠状動脈主幹部形成ステージの肺動脈と大動脈領域に注目して実施する。 同時に検討する実験:冠状血管の発生は心筋あるいは大動脈壁から分泌されるVEGFによって制御されていることが報告されてる。よってVEGF、そのレセプター、抑制因子に着目し、遺伝子、転写産物の発現局在、3次元培養系を用いた機能解析によって冠状血管が選択的に大動脈に侵入する際どのようにVEGFの機能が調節されているか検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額(B-A)に254,250円生じたのは余裕をみて500,000円の前倒し支払い請求を行ったため。
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次年度使用額の使用計画 |
国際学会、国内学会出席の旅費として使用します。また外注工作による定量PCRを計画しています。
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