研究実績の概要 |
心臓の冠状動脈内皮細胞の起源について、鳥類キメラ、蛍光色素標識、EGFP-Tol2システムを用いて検討した。従来、鳥類の冠状血管の起源と考えられていた心外膜原基(PEO, Proepicardial organ)は表層の心膜体腔由来のWT1陽性の上皮組織と内側の静脈洞内皮細胞由来の間葉組織で構成されていた。PEOのWT1陽性組織から心外膜、冠状動脈平滑筋、心筋間質細胞が発生し、内側の静脈洞由来の細胞から冠状動脈内皮細胞が発生することが明らかになった。次に、胎児期早期の心臓の領域別の冠状動脈内皮細胞の起源について検討した。その結果、心室自由壁の冠状動脈内皮細胞は静脈洞に由来していた。また心室中隔の冠状動脈内皮細胞は静脈洞および心室心内膜由来の冠状動脈内皮細胞が混在しており、心室中隔背側は静脈洞内皮細胞由来の冠状動脈内皮細胞が約50%であった。一方、心室中隔腹側は心室心内膜由来の内皮細胞が80%であった。また冠状動脈主幹部の内皮細胞の約80%は静脈洞に由来していたが、心室心内膜由来の細胞も混在していた。以上の結果から、胎児期早期の冠状動脈内皮細胞の起源は静脈洞内皮細胞と心室心内膜に由来し、冠状動脈の領域によって起源が異なることが判明した。新生児期の冠状動脈内皮細胞の起源についても検討し、心室自由壁の心内膜直下の冠状動脈内皮細胞は心室心内膜に由来し、心外膜直下の内皮細胞は静脈洞に由来することが判明した。本研究の結果から、鳥類の冠状動脈内皮細胞の起源はマウスと同様であることが明らかになった。
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