研究課題/領域番号 |
16K08453
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研究機関 | 自治医科大学 |
研究代表者 |
佐藤 滋 自治医科大学, 医学部, 准教授 (70306108)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 内耳形成 / 蝸牛有毛細胞 / 感覚器プラコード / ニワトリ胚 / Cre-loxシステム / ホメオボックス遺伝子 / 転写制御 / エンハンサー |
研究実績の概要 |
Six1有毛細胞エンハンサーの同定を目指し解析を行った。まず、マウスで見られるE15.5からの蝸牛有毛細胞特異的なSix1発現の再活性化が、ニワトリ8-10日胚のbasilar papilla(マウスの蝸牛に相当)においても見られることを確認した。次に、ニワトリ4日胚の耳胞にエレクトロポレーション法によりDNAを導入し、4-6日後に内耳をとり出し、basilar papilla特異的なエンハンサー活性の有無を調べた。四肢動物のSix1周辺で保存された12種類の非コード配列について調べたが、有毛細胞特異的なエンハンサーは発見できなかった。そこで、マウス胚から有毛細胞だけをFACSにより単離し、網羅的な方法(H3K27ac抗体を用いたChIP-sequencing)による検索を試みることに変更し、内耳有毛細胞特異的にEGFPを発現するAtoh1-EGFPマウスを入手した。現在繁殖を行っているが、E16.5の蝸牛有毛細胞特異的なEGFPの発現については確認できた。 Six1の内耳発生後期における機能を調べるためにはSix1-floxマウスが必要である。残念なことに、すでに報告のあるSix1-floxマウスの分与はフランスの研究者に断られた。そのため、理研CLSTとの共同研究として、Six1のエクソン1の前後2ヶ所にflox配列をゲノム編集法(Cas9)にて挿入し、新たなSix1-floxマウスを作製することにした。C57BL/6J受精卵を用い、1本鎖DNAと2本鎖プラスミドをドナーとして用いる2種類の方法での作製を試み、それぞれ、38匹と16匹の新生仔を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Six1遺伝子周辺で四肢動物で保存された非コード配列に着目したSix1有毛細胞エンハンサーの検索は不調に終わり、フランスの研究者から分与してもらったSix1-floxマウスの利用もできなかった。しかし、H3K27ac抗体を用いたChIP-seqによる検索の準備は順調に進んでおり、数ヶ月中にエンハンサーを同定できると期待している。また、Six1-floxマウスの作製も、すでに新生仔を得て順調に進んでいるため、研究はおおむね順調に進んでいると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本計画の具体的目標は、1)シグナルによるSix1活性化機構の解明、2)内耳形成後期でSIX1を欠損するマウスの表現型解析、3)有毛細胞と感覚神経でのSIX1機能の相違点の解明である。前述のように、今年度発生したトラブルは回避できたと考えており、Six1の有毛細胞エンハンサーとSix1-floxマウスを利用した解析も計画通り行うことができる。今後の研究の進め方に変更はない。
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次年度使用額が生じた理由 |
Six1の有毛細胞エンハンサーの検索、Six1-floxマウスの入手(作製)がやや遅れているため、いくつかの試薬・キットの購入、受託解析の支払いが、平成28年度ではなく、平成29年度の支出となるため。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の項目に予定通り使用する。
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