脊椎動物の中内胚葉予定細胞の分化運命決定には、分化誘導因子Nodalの濃度と作用時間が重要であることが知られているが、発生段階の個々の細胞でのNodalシグナルの時間変化と分化運命の関係は詳細が明らかでない。本研究では、zebrafish胚を用いて中内胚葉誘導時のNodalシグナルの強度・作用時間・分化運命の関係を調べることを目標としている。得られる知見はホ乳類幹細胞の分化制御技術にも有益な情報となり再生医療への貢献が期待できる。 昨年度までに、個々の細胞におけるNodalシグナル活性化の時間変化を比較し、特徴の抽出を行った。平成30年度は、光シート顕微鏡を用いて得られた3Dタイムラプス画像から、引き続き予定中内胚葉細胞の3次元追跡行い解析細胞数を増やした。また、Nodalシグナル強度の可視化に加えて、細胞近傍のNodalリガンドの分布を知ることは重要であるが、Nodalリガンドの分布を生きた胚で可視化するのは困難がある。Nodalリガンドの発現が予想される胚表面及び卵黄多核層との境界からの距離は細胞近傍でのNodalリガンド量の目安になると考えられ、予定中内胚葉細胞の3次元追跡結果から距離の解析方法を開発した。これにより、ゼブラフィッシュ胚の予定内胚葉の個々の細胞が受けたNodalシグナルの強度・作用時間の変化を複合的に検証できるようになった。分化運命や細胞の挙動(運動・極性)と比較することでNodalシグナルの時間変化の効果を検証できる基盤的技術を開発できた。
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