VAMP5は細胞内の小胞輸送に関わるタンパク群に属する蛋白質として1998年にクローニングされた。しかし、その機能は明らかではなかった。その後、私たちは、VAMP5の生体での機能を探るため、VAMP5の欠損マウスを作出した。本研究では、VAMP5欠損マウスの表現型を形態解析した。形態解析のための新規3Dイメージング技術の開発も行った。この技術は同一標本から3Dデータと切片による2Dデータを得られる新しい技術である。この技術により欠損マウスの死因究明と、変異した臓器の解析を行った。死因究明では、肺の拡張不全を見いだした。VAMP5は細気管支の基底細胞に発現するところまで明らかにした。生存したマウスがわずかに得られたが、腎嚢胞を呈した。3Dおよび切片による2D解析により、嚢胞は腎盤由来のひとつながりであることが分かった。VAMP5欠損マウスの解析結果は、先天性腎尿路異常(CAKUT)の発症機序解明につながる可能性がある。CAKUTは先天性とはいえ、原因遺伝子が特定されているのは少数であり、VAMP5のような膜輸送関連蛋白質や、尿路上皮基底側の機能低下が考えられる発症機序はこれまでに知られていない。今後の解析が期待される。また、新しく開発した3Dイメージング技術は、Correlative microscopy and Blockface imaging (CoMBI)と命名した。本研究のみならず、他の共同研究にも利用されている。幅広い生物試料を簡便・低価格で3Dデータ化できるため、幅広い研究分野で活用され、3D形態解析が普及するものと期待できる。
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