研究課題
細胞膜直下に膜骨格として組み込まれるシグナル蛋白の一つであるMPP6の遺伝子欠損マウスを作製し、末梢および中枢の神経組織さらに腸管や精巣を含むMPP6を発現する上皮管腔組織をもつ臓器において、電子顕微鏡観察を用いてMPP6が組み込まれた膜骨格構造を野生型マウスと3次元的に比較し、膜骨格の細胞接着やシグナル伝達に関与した組織の構造変化に着目して生理学的機能も統合させながら、秩序だった形態形成機能を解析することを目的とした。そのためにMPP6遺伝子欠損マウスの作製(具体的にはゲノム編集用のベクターの作製と確認、受精卵へのベクター導入とF1ヘテロマウスの確認、交配によりホモマウスを得ること)を完了し、各臓器の機能形態学的解析を開始している。とくに末梢神経系シュワン細胞において、MPP6が単独でもシグナル蛋白ファミリーの一部の輸送の役割を持つことが分かり、形態解析としての末梢神経における光学および電子顕微鏡によって、ミエリン(髄鞘)形成に異常をもたらすことを見出した。具体的には野生型マウスと比較してミエリンの厚みが神経軸索径に対して増加したことから、MPP6がミエリン形成において抑制シグナルの役割をもつことが示唆された。ただし作製したマウスにおいて膜骨格4.1Gと接着分子CADMの局在は保持されていたことから、4.1Gのほうがこれらの複合体形成を先導することも明確となった。このように、先に作製している膜骨格4.1蛋白欠損マウスにおける検討に続いて、シュワン細胞におけるミエリン形成のシグナル経路の一端が解明できたと考えられ、これらの内容について学会発表を行うと同時に、現在論文作成を進行中である。
2: おおむね順調に進展している
目的とした遺伝子の改変によるマウス作製は完了し、そのマウスを用いて組織における役割についての解析に着手できた。その解析の中で、末梢神経系において野生型マウスとの機能形態学的な違いを見出し、目的蛋白の役割が個体レベルで解明されつつある。
今回作製したマウスの表現型とくに神経系における変化について得られた所見の再現性を確認する。さらにこれまでに作製している遺伝子改変マウスを比較することで、細胞内シグナル経路の蛋白複合体の関連性を解析していく。さらにこの蛋白が発現する上皮組織においても、この蛋白が関わる構造機能を検討していく。
すべて 2017 その他
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件) 備考 (1件)
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http://www.shinshu-u.ac.jp/faculty/medicine/health/professor/nobuoterada.html