マウス嗅球外網状層の神経回路形成を制御し、僧帽細胞側方樹状突起間などに認められる新規細胞間接着装置ネクチン-1スポットの形成や作用機構を解明する目的で、ネクチン-1スポットとの物理的・機能的な相互作用、または機能的に代替えできる細胞膜貫通分子の探索を行った。 まずネクチン-1スポットは受容体などの細胞膜貫通分子と共局在して機能しうると考え、嗅球で発現する細胞膜貫通分子のうち、ネクチン-1スポットと共局在するものをマウス嗅球初代培養細胞やマウス嗅球組織を用いた免疫細胞・組織化学的手法により探索した。その結果、嗅球外網状層に局在が認められる受容体型チロシンキナーゼ(RTK)とカリウムチャネル(KCh)を得た。KChは嗅球外網状層の深層部に局在が認められ、RTKとKChの局在はネクチン-1ノックアウト(KO)において減少した。また、僧帽細胞マーカーであるPGP9.5陽性の重なり合う樹状突起において、ネクチン-1スポットとRTKあるいはKChとの共局在が認められた。この結果は、ネクチン-1スポットがRTKあるいはKChと共局在してマウス嗅球外網状層におけるこれら分子の局在を制御することを示唆した。 生後約70日のマウス嗅球外網状層におけるネクチン-1スポットの局在は、生後約10日をピークにして減少する。生後約70日のRTKやKChの発現がネクチン-1KOにより減少したことから、生後約70日のネクチン-1スポットの代替え分子として、ネクチン-1KOマウスの嗅球外網状層に局在が認められるネクチン様分子Necl2を同定した。PGP9.5陽性のマウス嗅球初代培養僧帽細胞の重なり合う樹状突起において、Necl2とRTKとの共局在が認められた。 これらの結果から、ネクチン-1スポットとNecl2がRTKやKChと物理的・機能的に相互作用して嗅球外網状層の神経回路形成を制御する可能性が考えられる。
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