研究課題
組織幹細胞はある程度の多分化能を持ち、発生過程や細胞死、損傷組織の再生において、新しい細胞を供給する役割を持つと考えられている。下垂体前葉は、ホルモンの合成・分泌を行い、成長、生殖、代謝、行動など多くの生体機能の制御に関与している重要な内分泌器官である。下垂体前葉は、5種類のホルモン産生細胞と、非ホルモン産生細胞であるS100βタンパク質陽性細胞(S100β陽性細胞)と、血管系の細胞から構成される。申請者は、ラット下垂体前葉において幹細胞マーカーであるケモカインレセプターCXCR4とSOX2を発現する細胞は、細胞表面抗原CD9が発現することを見出した。本研究では、1)CD9陽性を示すS100β陽性細胞を組織学的手法及び分子生物学的手法により同定した。そして、CD9抗体とpluriBead Cell Separation kitを使うことで簡単にラット下垂体前葉からCD9/S100β/SOX2/CXCR4陽性細胞を高純度で単離することに成功した。分化誘導を行うことで内皮細胞へと分化することを証明した。またその分化誘導はBMPを介するシグナル伝達が非常に重要であることを明らかにした。臨床面から下垂体前葉を俯瞰すると、下垂体前葉に発生する腫瘍性病変を下垂体腺腫と呼ぶ。幹細胞の腫瘍化も報告され、短期間に再発を繰り返し、血管新生を引き起こすことで転移性をもち、下垂体癌となる。我々が得た単離したCD9/S100β/SOX2/CXCR4陽性細胞の内皮細胞への分化誘導は、この下垂体癌の形成機序を明らかにすることを期待させた。この結果は論文掲載された。2)CD9/S100β/SOX2/CXCR4陽性細胞を単離後、pituisphereを作製することに成功し、さらにこのpituisphereからホルモン産生細胞が分化することを明らかにした。この結果を学会発表し、現在論文執筆中である。
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