研究課題/領域番号 |
16K08476
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研究機関 | 愛知学院大学 |
研究代表者 |
池田 やよい 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (00202903)
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研究分担者 |
池田 正明 東京医科歯科大学, 大学院医歯学総合研究科, 准教授 (20193211)
三谷 章雄 愛知学院大学, 歯学部, 教授 (50329611)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | エストロゲン / ノックアウトマウス / 骨代謝 |
研究実績の概要 |
女性ホルモンエストロゲンは、卵巣で産生され、標的細胞のエストロゲン受容体(ER)を介して作用することにより、生殖系の調節に働き、脳では、脳の性分化や性行動の鍵を握る因子である。また骨組織では、骨芽細胞による破骨細胞分化の抑制、破骨細胞のアポトーシス促進により、骨の維持・形成に働く。最近、脳特異的ERαノックアウト(KO)マウスの骨の研究から、脳エストロゲンが骨吸収促進に働くことが報告された。この研究結果は、エストロゲンの骨への作用が、末梢と脳とで逆の作用をするという、これまでにない新しい知見を提示しているが、脳エストロゲンによる骨代謝制御の中枢は特定されておらず、作用機序も明らかでない。申請者らはステロイド合成の転写因子Steroidogenic factor 1(SF-1) の役割を研究している。本研究は、我々の作製した2種類のSF-1KOマウス、すなわち全身的にSF-1遺伝子を破壊した「グローバルSF-1KO マウス」を全身にエストロゲンのない動物モデル、「脳特異的SF-1KOマウス」を脳でエストロゲンの作用しない動物モデルとして利用することにより、エストロゲンの骨代謝への全身的作用と脳での局所的作用の違いを明らかにし、脳エストロゲンによる骨代謝制御の分子機構の解明を目指すものである。2種類のノックアウトの作成と解析を開始したが、「グローバルSF-1KO マウス」については、生後の維持がうまくいかず、予定された解析が進んでいない。「脳特異的SF-1KOマウス」については、成熟後まで維持することができ、個体の基本データ、および骨の解析を進めることができている。本年度の研究で大腿骨の性状の解析の結果がある程度得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究初年度は、2種類のSF-1KOマウスを作製した。まず、「グローバルSF-1KO マウス」については、従来の遺伝子破壊の手法により作製した。しかし、このノックアウトマウスは、出生後ホルモン補填を行わないと死んでしまう。本年度はこのホルモン補填による生後の維持がうまくいかなかったため、解析が進んでいない。「脳特異的SF-1KOマウス」については、Cre-LoxP法により、神経細胞に発現するnestinを用いたnestin-creとSF-1flox/floxとの交配により、作製した。このコンディショナルノックアウトマウスについては成熟マウスまでの維持ができており、基本データとして、各個体につき、性別、身長、体重、性ホルモン(エストロゲン、テストステロン、LH)の血中濃度を調べ、表現型として、体重増加が確認できている。また、このノックアウトマウスの大腿骨について、骨量の指標として骨の大きさ(体積、長さ)、形態、厚さ、骨梁の数を調べる。CTおよびMicro-CTによる骨密度、骨ミネラル密度 (BMD)を測定した。さらに骨の一部を用いて、骨を脱灰し、組織切片を作製し、骨の組織像を観察した。さらに骨の一部からRNAを抽出し、RT-PCRにより骨マーカー因子の発現を解析した。以上について、当初の計画通り研究が進み、解析結果が得られている。しかし、予定していたin situハイブリダーゼーションによる遺伝子発現、およびウエスタンブロッティング、リアルタイム RT-PCRによる定量的解析に遅れが生じている。また、骨以外に、解析を予定していた脳と生殖腺についてはサンプルの収集はできたが、解析が進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
「脳特異的SF-1KOマウス」について、本年度の研究で大腿骨の性状の解析の結果がある程度得られているので、この結果に基づいて大腿骨以外の骨についても同様の解析を行う。さらに、緻密骨と海綿骨とに分けて解析、および発達期、成熟期、老化といった経時的変化、あるいは雌雄差に着目した観点から詳細な解析を行なっていく計画である。さらに、骨以外の組織である脳と生殖腺についても表現型の解析を行う予定である。「グローバルSF-1KO マウス」については、マウスの生後の維持ができていない状況であるので、こちらの解析は断念し、今後は「脳特異的SF-1KOマウス」についてのみ研究を進める計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初予定していた使用計画より、購入した物品費が少なくて済んだ。また、予定していた国際学会での発表を行わなかった。以上の状況から当該助成金が生じた。この分は物品費として使用する計画である。
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