研究課題
有胎盤哺乳類脳では、大脳半球間をつなぐ神経軸索が集まり太い束となった脳梁が発達し、高次脳機能の制御に関わる。脳梁形成過程で大脳正中線領域に発現する軸索ガイダンス因子が、大脳正中線への神経軸索の伸長誘導と、正中線交差後の軸索伸長を適切な方向へと導く。セマフォリンの高親和性受容体ニューロピリン1(Npn1)は、帯状回パイオニア軸索に発現し正中線への軸索ガイダンスで必須の役割を担う。Npn1陽性パイオニア軸索のガイダンス過程で、Npn1と相互作用しセマフォリンの信号を細胞内伝達するPlexinは不明である。脳梁発達におけるPlexinA1の役割検討のため、BALB/cAJ背景の野生型(WT)とPlexinA1欠損(PlexinA1 KO)マウスを用いた免疫染色の結果、胎生17.5日齢(E17.5)のPlexinA1 KO脳にPlexinA1は検出されず、WTの帯状回と新皮質由来の脳梁軸索におけるPlexinA1の局在が判明した。セマフォリンのSema3AとSema3Cの局在と発現レベルは、WT とPlexinA1 KO間に有意差は無かった。Npn1の免疫染色と神経トレーサーdiIの帯状回皮質への注入実験によるパイオニア軸索路追跡の結果、E17.5のPlexinA1 KO脳では正中線以外の異所性領域への脳梁軸索の投射異常は検出されず、PlexinA1 KO脳梁軸索の正中線交差の頻度が、WT脳と比較して有意に低いことが判明した。さらに生後0.5日齢(P0.5)の脳梁表現型をL1CAMの免疫染色で解析した結果、PlexinA1 KOマウスの大部分において脳梁前半部での脳梁欠損の存在が明らかとなった。以上の結果、BALB/cAJマウスの脳梁発達の過程で、脳梁軸索の正中線方向への誘導にはPlexinA1は必須ではなく、脳梁軸索が正中線を交差する段階で重要な役割を担うことが示唆された。
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