研究課題/領域番号 |
16K08481
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
早坂 晴子 近畿大学, 理工学部, 准教授 (70379246)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 腫瘍血管 / メラノーマ増殖 / 免疫細胞 |
研究実績の概要 |
高内皮細静脈 (HEV) は二次リンパ組織特異的に形成され、定常状態における免疫組織への選択的なリンパ球移行に不可欠なる特殊血管である。近年、癌組織においてもHEVの形態学的特徴や遺伝子発現様式を示す類似の血管が発見され、このHEV様血管 (HEV-LV)が癌組織内に免疫細胞を動員することが示唆されている。私たちは腫瘍組織で形成されるHEV-LVを、二次リンパ組織HEV内皮細胞に発現することが知られているケモカインCCL21 発現を介して検出することに成功した。Ccl21a プロモーターの制御下に蛍光タンパク質TdTomatoを発現するマウスに、メラノーマB16F10を皮内移植し組織解析をおこなった結果、HEV-LVの特徴をもつ腫瘍内血管が観察された。HEV-LV形成が抗腫瘍免疫に関与する可能性を検討するため、私たちが既に同定した新規HEV形成誘導因子Dach1の過剰発現マウスにB16F10を移植し、血管形成の変化を免疫組織解析により比較した。その結果、Dach1恒常発現するマウスに形成させた腫瘍組織において血管形成が増加する傾向がみられた。現在、このマウスに形成された腫瘍組織におけるリンパ球浸潤を比較するため、免疫細胞マーカーを用いて解析を行なっている。さらに、Dach1遺伝子の時期・組織特異的遺伝子欠損マウスを作出し、B16F10移植後の血管形成および腫瘍組織の免疫組織学的解析をおこなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は新規HEV形成誘導因子Dach1の過剰発現マウスに腫瘍細胞を移植し、HEV-LVを含む血管形成の増加を解析することができた。また時期・組織特異的遺伝子欠損マウスを作出し、担癌マウスとして使用可能な成体マウスを得ることができた。今後、これらのマウスを用いてHEV-LV形成と抗腫瘍免疫との関連について解析する基盤ができた。さらにこの研究の過程で、Ccl21a プロモーターTdTomatoのホモ個体(CCL21a遺伝子産物を欠損する)では、メラノーマの増殖が著しく抑制されるという新たな知見を見出した。このことから、HEV-LVから発現するCCL21aあるいはレシピエントマウスに発現するCCL21aが腫瘍増殖に関与する可能性が考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
新規HEV形成誘導因子Dach1の時期・組織特異的遺伝子欠損マウスが得られたため、B16F10移植後のHEV-LV血管形成解析をおこなう。組織についてはHEVマーカーとして知られている接着分子PNAd (peripheral node addressin)の発現および血管マーカーCD34, あるいは血管結合性レクチンIsolectinB4を用いて血管を検出する。 また肺癌細胞についても腫瘍組織内HEV-LV形成の変化を解析する。Dach1の過剰発現担癌マウスを用いて、腫瘍血管形成が免疫細胞浸潤に及ぼす影響を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文投稿を考えていたが、データの収集状況を考えて次年度に持ち越したため。
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