研究課題
電位依存性遅延整流型K+チャネル、Kv1.3は、胸腺リンパ球の細胞膜上に多く存在し、その活性がリンパ球の増殖や活性化を促す。これまでの研究により、悪性腫瘍や自己免疫疾患では、癌細胞やリンパ球におけるKv1.3の過剰発現が、病気の発症や進展に大きく関与することが分かっているが、慢性腎臓病をはじめとする“慢性炎症性疾患”におけるKv1.3の病的意義については明らかにされていない。腎不全末期の腎臓では、実際に、マクロファージやリンパ球などの炎症性細胞や線維芽細胞の活性が上昇しており、それらの増殖が盛んであることも分かっている。雄のSDラットに5/6腎摘術を施して作成した末期腎不全モデルラットの腎臓を解析することにより、本病態下では、腎臓リンパ球におけるKv1.3の過剰発現が局所における炎症性細胞の増殖・活性を刺激し、腎臓間質の線維化を促すことを明らかにした。一方で、主に電気生理学的手法を用いた研究によって、非ステロイド性抗炎症薬や一部の抗菌薬に加え、降圧薬(Ca2+拮抗薬)やマクロライド系抗生物質、スタチン系脂質降下薬も、リンパ球Kv1.3チャネル電流を有意に抑制することにより、免疫抑制作用を発揮することを明らかにした。中でも、日常診療で頻用されているCa2+拮抗薬:Benidipineやスタチン系脂質降下薬:Simvastatinは、本チャネル電流を強力かつ持続的に阻害したことから、末期腎不全モデルラットに対し、本薬剤の治療的な投与を試みた。その結果、末期腎不全ラットの腎臓では、これらの薬剤の投与により、皮質間質領域における細胞周期マーカーの発現が減少するとともに、炎症性細胞の増殖が抑えられ、これらの細胞由来のサイトカイン産生も有意に抑制された。とくにBenidipineは、糸球体硬化病変の進展には影響を与えなかったが、腎臓間質領域における線維化の進行を、有意に抑制した。
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https://www.myu.ac.jp/academics/news/folder001/3844/