研究実績の概要 |
グルコース値の上昇がカルシウム・カルモデュリン依存性プロテインキナーゼII(CaMKII)をO-結合型グリコシル化し、このグリコシル化によるCaMKIIの活性化が不整脈を増加させるという仮説が提唱されている。そこで以下の測定を行った。 (1)グルコース値の150から400 mg/dLへの上昇は、ラット多細胞心室筋においてカルシウム波伝播速度を増加させ(n=9, p<0.05)、400から150 mg/dLへの減少は伝播速度を低下させた(n=9, p<0.05)。CaMKIIの阻害薬であるKN-93存在下での400 mg/dLへのグルコース値の上昇は、カルシウム波伝播速度を増加させなかった(n=9)。イソプロテレノール存在下で、グルコース値の150から400 mg/dLへの上昇は、電気刺激後の不整脈を増加させた(n=8, p<0.05)。CaMKIIの阻害薬であるKN-93(n=7)とautocamtide-2 related inhibitory peptide (n=6)存在下、フルクトース6リン酸からグルコサミン6リン酸への変換酵素を阻害するジアゾ5オキソLノルロイシン(n=7)存在下では、グルコース値の400 mg/dLへの上昇は電気刺激後の不整脈を増加させなかった。 (2)グルコース値の上昇による浸透圧の上昇が催不整脈性の亢進に関与するのかどうかを検証するために、グルコース値150mg/dlにL-グルコース250mg/dLを加えた。L-グルコースを用いたグルコース値の上昇は電気刺激後の不整脈を増加させなかった(n=6)。 (3)CaMKII活性の測定はSignaTECT CaM KII Assay System(Promega)を用いて行った。グルコース値の150から400 mg/dLへ上昇はCaMKII活性を増加させた(n=5, p<0.05)。
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