研究課題/領域番号 |
16K08487
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
阿部 倫明 東北大学, 大学病院, 准教授 (40400246)
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研究分担者 |
小柴 生造 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 教授 (70332301)
三枝 大輔 東北大学, 東北メディカル・メガバンク機構, 講師 (90545237)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 経口アルカリ性化剤 / 尿毒症物質 / クエン酸 / 重炭酸 / 慢性腎臓病 |
研究実績の概要 |
慢性腎臓病(CKD)では尿毒症物質が体内に蓄積し代謝性アシドーシスが生じ、また強い酸性尿が排泄される。これまで本研究代表者は、高食塩(Na負荷)が腎内酸化ストレスを増強することにより食塩感受性高血圧の悪化因子となる事を明らかにしてきた。また重炭酸NaをCKDモデル動物に投与すると、酸性尿が改善されアルブミン尿による腎内酸化ストレスが減弱し、腎尿細管障害が軽減する事を実証してきた。不思議なことに、どちらもNa負荷であるにも関わらず一方では腎障害を惹起し、他方では腎保護効果が認められた。そこで本研究代表者は、『重炭酸イオンなどの経口アルカリ性化剤はCKD患者に置いて代謝性アシドーシスや酸性尿を改善し、腎保護効果をもたらす』という仮説を立てた。本研究課題では、尿と血漿の定量的メタボローム解析と網羅的メタボローム解析を行い、経口アルカリ性化剤が尿毒症物質の尿中排泄を亢進し血中尿毒症物質を低下させ腎保護効果を発揮する可能性を実証することを目的とする。さらに、CKD動物モデルを使用し、経口アルカリ性化剤による腎保護効果のメカニズムをさらに追求する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度3月、患者登録期間が終了となった。順調にサンプリング(血漿・早朝尿)は進んでいる。 LC-MS/MSによる尿毒症物質の定量的メタボローム解析では、クエン酸Na・K投与群でインドキシル硫酸・パラクレジル硫酸・アルギニノコハク酸の尿中排泄が増加し、明らかにインドキシル硫酸の血中濃度が低下した。本研究結果は特許申請出願中であり、その後、アメリカ腎臓学会・国際腎臓学会で報告した。 さらに、GC-MS/MSによる網羅的メタボローム解析では、クエン酸Na・K投与群・炭酸水素Na投与群の両方でいくつかの代謝分子の血中濃度が低下していたことが判明した(特許追加申請中であるためまだ詳細は省略)。
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今後の研究の推進方策 |
今後、上述の研究結果について英文論文を作成中である。 さらに以下の研究を予定している。 1)全サンプルについて、メタボローム測定・解析を進める。 2)CKD動物モデルを使用し、経口アルカリ性化剤による腎保護効果のメカニズムをさらに追求する。具体的には経口アルカリ性化剤により血中濃度の増加が認められた代謝産物が認められた場合、その物質による腎保護・抗高血圧についての創薬の可能性を追求する。一方、血中濃度が低下した尿毒症物質がどのようなメカニズムで減少したか、薬物的血液浄化や代謝経路について動物実験モデルを使用してさらに検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
メタボローム解析をまだ行ってないサンプルについて、H30年度に測定する予定となったため。 メタボローム解析用試薬 LC-Q-FT/MS分析カラム(ZIC-pHILIC PEEK製カラム/¥110,000)、1本分の費用として翌年度に繰り越すこととなった。
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