研究課題
糖の恒常性は膵β細胞から分泌されるインスリンによって厳密に保たれているが、血糖上昇に応じた適切な時期かつ量のインスリン分泌が重要となる。インスリン分泌を機能とする膵β細胞は単一細胞にすると分泌制御応答が極度に減弱し、β細胞凝集体である膵島を構成することで必要に応じたインスリン分泌応答が発揮される。しかしながら、その詳細な制御メカニズムはいまだ不明である。一方、プライマリーシリア（一次繊毛）は細胞膜上に生えた小器官で、細胞外のシグナルを感知するセンサーとして化学および機械的刺激や様々なシグナル分子を受容し細胞内へ伝達することが近年わかってきた。本研究では、その高度な制御機構を担うβ細胞間コミュニケーション因子として一次繊毛に着目し、膵β細胞における一次繊毛の機能的ならびに形態学的役割を明らかにし、一次繊毛の生理的意義を解明することを目的として研究を行う。今年度初めの申請者の所属研究施設の異動により、新たな研究施設での研究設備の整えや実験機器の購入などの研究室の立ち上げを当初行っていた。したがって、その間研究を進めることはできなかったが、ようやく研究が遂行できる環境が整った。現在、当初の初年度計画の膵島組織における一次繊毛の免疫染色による発現の確認ならびに膵β細胞株MIN6細胞より作製した擬膵島における一次繊毛の免疫染色やreal-time PCRによる発現確認の検討を行っている。さらに一次繊毛の発現に関連する因子についても同様の検討を行っている。
3: やや遅れている
今年度始めに申請者の所属研究施設の異動があり、新たな研究施設での研究に向けた準備や研究設備の整え、機器の購入など、研究室の立ち上げを当初行っていた。したがって、その間研究を遂行することはできず、研究スタートが当初の予定より遅れることとなった。しかし、研究室の立ち上げも終了し、研究を進められる状況になった。現在、当初の初年度計画の膵島組織における一次繊毛の発現の確認を免疫染色にて、ならびに膵β細胞株MIN6細胞擬膵島における一次繊毛の発現を免疫染色やreal-time PCRを用いて検討しており、また一次繊毛の発現に関連する因子についても検討を行っている。その後も研究実施計画通り遂行できるものと確信している。
膵島や膵β細胞株MIN6細胞による擬膵島における一次繊毛の発現について、免疫染色やreal-time PCRで検討を進め、その発現量や空間的発現位置について確認する。またその他の一次繊毛の発現に関連する因子や細胞接着分子などの発現についてもその発現量や一次繊毛との空間的発現位置関係について検討する。その後、それら因子の過剰発現やノックダウンすることによる一次繊毛の発現への影響について検討し、関連因子と一次繊毛の関係について明らかにする。さらに、一次繊毛のインスリン分泌機能への関与について、一次繊毛や関連因子の発現を変動させることによる分泌能への影響を検討する。さらに、パラクラインに関連する因子のGPCRの発現も同様の手法で検討し、一次繊毛上のGPCR発現について確認し、一次繊毛上にGPCRが存在する意義を明らかにしていく。このように、当初の研究実施計画通りに進める予定である。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 1件)
Journal of Agricultural and Food Chemistry
巻: 64 ページ: 8857-8865
