本研究では,骨格筋L型カルシウムチャネル(LTCC)の正常な機能と細胞内局在における,ジャンクトフィリンの役割について検討を行っている。筋細胞において,LTCCは形質膜と筋小胞体膜が近接する結合膜構造と呼ばれる部位に集積している。昨年までの研究で,ジャンクトフィリンがLTCCのCaV1.1サブユニットC末端に結合し,LTCCの結合膜構造への局在を調節していることを明らかにしてきた。また,ジャンクトフィリン1の膜貫通部位を含むC末端欠失変異体(JP1ΔCT)を用いて,LTCCとジャンクトフィリン1の結合が,正常な骨格筋の収縮に必要であることを示してきた。 今年度は,骨格筋や心筋に発現するもうひとつのサブタイプであるジャンクトフィリン2の役割について検討を行った。強制発現させたJP1ΔCTは形質膜上に分布し,LTCCの結合膜への局在を阻害する。そこでJP2の遺伝子配列を用いて,同様にC末端を欠失させた変異体(JP2Δ565)を作製した。この遺伝子を培養筋芽細胞由来の筋管に発現させ,その細胞内局在を免疫染色法で確認した。その結果,細胞膜に局在するJP1ΔCTと異なり,JP2Δ565は核内に局在することが分かった。そこで,さらに欠失領域の大きいJP2Δ427を作製し,同様の検討を行ったところ,この変異体は細胞膜に局在することが確認された。これらの結果はJP2の427から565アミノ酸残基の間に,核移行シグナルが存在することを示唆している。最近,JP2が心不全時にカルパインによって分解され,JP2Δ565に類似した断片が生体内で生成することが報告されており,現在にこの分子の機能について検討を行っている。
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