研究課題/領域番号 |
16K08492
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
浦野 哲盟 浜松医科大学, 医学部, 教授 (50193967)
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研究分担者 |
鈴木 優子 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (20345812)
岩城 孝行 浜松医科大学, 医学部, 准教授 (70509463)
佐野 秀人 浜松医科大学, 医学部, 助教 (80623842)
田中 宏樹 浜松医科大学, 医学部, 助教 (50456563)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 血液凝固 / 線溶 / 血小板 / 血管愛内皮細胞 / プラスミノゲン / TAFI |
研究実績の概要 |
本研究の概要は、血栓(線維素)溶解(線溶)過程における血小板の役割を解析することである。 我々はイメージング手法を用い血管内皮細胞上と同様に活性化血小板膜表面に組織型プラスミノゲンアクチベータ (tPA) と共にプラスミノゲンがリジン結合部位(LBS)依存性に集積し、血小板膜が線溶系活性化を促進し溶解開始起点として機能することを見出した。本効果は本来血管内皮細胞上に発現しトロンビン活性化線溶阻害因子 (TAFI)の活性化に関わるトロンボモジュリンにより消失することも証明した。 血管内皮細胞上の線溶活性発現を、標識プラスミノゲンの集積とフィブリン網の溶解で解析した。血管内皮細胞の存在下及び非存在下で、蛍光標識プラスミノゲン、組織型PA、フィブリノゲンの存在下で多血小板血漿を組織因子とCaCl2で処理し、フィブリン網の形成とその溶解過程を共焦点レーザー顕微鏡で解析した。 活性化血小板膜表面からのフィブリン形成とともに、同部位へのtPAとプラスミノゲンの集積、さらには同部位から開始する溶解縁へのプラスミノゲンの集積を伴うフィブリン溶解を認めた。可溶性トロンボモジュリン存在下ではフィブリン形成と初期のプラスミノゲンの集積は同様であったが、以降の集積の増幅は認めず、溶解時間は著明に延長した。トロンボモジュリンの効果は、活性化 TAFI(TAFIa) 阻害薬及びトロンボモジュリン・トロンビン結合の拮抗抗体により消去された。今回血管内皮細胞存在下では、トロンボモジュリン添加の影響は小さかったが、活性化 TAFI(TAFIa) 阻害薬及びトロンボモジュリン・トロンビン結合の拮抗抗体により、プラスミノゲンの集積の改善、溶解時間の短縮ともに強く認められた。これにより血管内皮上のトロンボモジュリンがTAFIの活性化を促進し線溶活性を抑制している事実が確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
血管内皮細胞上でのフィブリン網の形成溶解過程のイメージング解析に成功しており、今後各機能分子の動態を解析することが可能となった。また、トロンボモジュリン・トロンビン複合体形成を阻害する中和抗体、及び TAFIa 阻害薬の使用により、血管内皮上に発現するトロンボモジュリンの影響の解析にも成功した。今後、血小板に発現するトロンボモジュリンの影響との役割の分担の解析が可能となっている。 また PAI-1 欠損 iPS 細胞からの血管内皮細胞及び脂肪細胞への分化誘導には成功しており、PAI-1 欠損血小板産生の条件設定も開始した。 これらの進捗状況より「おおむね順調」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、TAFI 活性化の時空間的制御を検討する。現時点では蛍光標識 TAFI の経時的な局在の変化を追跡しており、今後その活性化と TAFIa 活性発現部位の経時的な局在の変化を解析する。 またTAFI欠損GFP発現マウスの作成に着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた TAFI 遺伝子欠損マウスと GFP 過剰発現マウスとの交配マウスの作成が遅れており、初年度ではそれにかかる費用を使用しなかったため。またiPS 細胞からの分化誘導実験で多くは血管内皮細胞と脂肪細胞への分化を行い、巨核球への分化の実験に要する費用を使用しなかったため。
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次年度使用額の使用計画 |
29年度に交配マウスの作成と、iPS 細胞の巨核球への分化の実験を開始する予定であり、当該費用を使用する予定である。
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