研究課題/領域番号 |
16K08497
|
研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
神鳥 和代 香川大学, 医学部, 助教 (40457338)
|
研究分担者 |
徳田 雅明 香川大学, 医学部, 教授 (10163974)
山口 文徳 香川大学, 医学部, 准教授 (40271085)
董 有毅 香川大学, 医学部, 助教 (90457341)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | MAPキナーゼ / TXNIP / 癌抑制 / ユビキチン-プロテアソーム / D-アロース |
研究実績の概要 |
1、D-アロースによるTXNIP発現誘導機構解析;これまでの解析から、株化肝癌細胞HuH-7にD-アロースを添加すると、MAPKに属するErk1/2とp38MAPKのリン酸化が亢進し、その後TXNIPの発現が上昇することを明らかにしている。28年度はTXNIPの発現上昇に関与するシグナル伝達系の解析を行い、Erk1/2の下流分子p90RSKのリン酸化がD-アロースにより亢進することを明らかにした。またErk1/2リン酸化阻害剤PD98059によりTXNIPの発現上昇が抑制されたことから、Erk1/2-p90RSKシグナル伝達系がD-アロースによるTXNIPの発現上昇に関与していると考えられる。さらにp38MAPK阻害剤SB203580によりTXNIPの発現上昇が抑制されたことから、p38MAPKシグナル伝達系がD-アロースによるTXNIPの発現上昇に関与していると考えられる。またD-アロース添加により転写調節因子MondoAが核内で増加することを明らかにした。2、TXNIPの減少による発癌機序解析;HuH-7において血清刺激によりTXNIPが減少する機構を解析した。ユビキチン-プロテアソーム系の阻害剤ラクタシスチンにより、TXNIPの減少が抑制されたことから、この系によりTXNIPが分解されると考えられる。またタンパク質合成阻害剤シクロヘキシミドを用いた解析から、血清によりTXNIPのタンパク質合成が減少することが明らかになった。3、D-アロースのin vivoにおける癌抑制効果の分子レベルでの解析;マウスのHuH-7由来腫瘍組織にD-アロースを皮下投与すると、腫瘍組織の体積が減少した。また免疫組織染色法によりD-アロースを投与した組織においてTXNIPが増加することが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
株化肝癌細胞HuH-7においてD-アロースを添加した際のシグナル伝達系について解析を行った。Erk1/2の下流で活性化される分子p90RSK を同定し、阻害剤を用いた解析によりErk1/2およびp38MAPKシグナル伝達系がTXNIPの発現上昇に関与することを明らかにした。また複数の転写調節因子について発現量、局在、およびリン酸化状態の検討を行った。その結果D-アロース添加によりMondoAが核内で増加した。その他の分子はいずれもD-アロース添加により持続的に有意な変化はみられなかった。これらの分子については引き続きリン酸化状態を検討する。今年度は主にリン酸化または局在の解析を行ったため、当初予定していたReal-time PCR法を用いたmRNA発現解析は行わなかったが、ほぼ予定通りの進捗である。 HuH-7に D-アロースを添加しTXNIPを発現させた後、血清刺激によりTXNIPが減少する機構を解析した。ユビキチンープロテアソーム系を介したタンパク質分解とタンパク質合成阻害の両方が関与していることを明らかにした。またTXNIP発現抑制実験に向けて、初代培養正常肝細胞でのTXNIPの発現を確認した。ほぼ予定通りの進捗である。 腫瘍モデルマウスの腫瘍組織にD-アロースを皮下投与すると、腫瘍組織の体積が減少した。また免疫組織染色法によりD-アロースを投与した組織においてTXNIPが増加することが明らかになった。ほぼ予定通りの進捗である。
|
今後の研究の推進方策 |
28年度は複数の転写調節因子についてD-アロースの添加による発現量、局在の変化を検討した。その結果、転写調節因子MondoAが核内で増加することが明らかになった。この分子については阻害剤を用いてErk1/2およびp38MAPK経路を介したTXNIPの発現上昇との関連を解析する。その他の分子はいずれもD-アロース添加により持続的に有意な変化はみられなかった。これらの分子については今後D-アロースの添加によるリン酸化状態の変化を検討する。またクロマチン免疫沈降法などを用いてD-アロースの添加時のTXNIPの発現上昇の機構を解析する。 TXNIPが減少する機構の解析については、ユビキチンープロテアソーム系を介したタンパク質分解経路とタンパク質合成阻害経路に関与するシグナル伝達系を明らかにする。またTXNIP発現抑制実験については、初代培養正常肝細胞に加えて今後の解析に適する細胞を選定する。条件はTXNIPを発現する非腫瘍細胞で、siRNAによる遺伝子発現抑制効率がよいものである。 腫瘍組織における解析は、培養細胞での解析で発現の変化がみられた分子、および細胞周期関連分子について引き続き免疫組織染色によりタンパク質発現変化を検討する。またD-アロースの経口投与による腫瘍抑制効果も検討する。
|