研究課題/領域番号 |
16K08505
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
安岡 有紀子 北里大学, 医学部, 講師 (50348504)
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研究分担者 |
佐藤 雄一 北里大学, 医療衛生学部, 教授 (30178793)
野々口 博史 北里大学, 北里大学メディカルセンター, 部長(医師) (30218341)
河原 克雅 北里大学, 医学部, 名誉教授 (70134525) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | カルシウム感知受容体 / ペンドリン / アルカリ分泌 / 低リン食 / 腎集合管 |
研究実績の概要 |
集合管間在細胞type B(IC-B)に発現するカルシウム感知受容体(CaSR)の機能を解析するために、高カルシウム血症モデルとPendrin KOマウスを組み合わせ、尿成分の変化を解析した。 平成28年度の実験より、低リン食負荷マウスは高カルシウム血症を誘発し、アシドーシスであるにもかかわらず尿はアルカリ化、IC-Bにおいてアルカリ分泌を担うPendrin (Cl-/HCO3- exchanger)の発現量は増加していた。この低リン食負荷時のIC-BのPendrinの発現誘導および活性化は、高カルシウム血症によるCaSR活性化を介したシグナルであることを証明するために、Pendrin KOマウスに低リン食を負荷し、高カルシウム血症を誘導した。Pendrin KOマウスは、標準飼育状態における血液のpHはWTマウスと有意な差はなかったが、HCO3-濃度はWTマウスよりも高く(KO, 21.50±0.44、WT, 19.05±0.44、P<0.005)、尿はWTマウスよりも酸性化していた(KO, 5.17±0.04、WT, 6.18±0.08、P<0.005)。低リン食負荷後、両マウスは共に高カルシウム血症を示し、WTマウスは尿がアルカリ化したが、KOマウスは変化しなかった(KO, 4.97±0.05、WT, 7.31±0.09)。このことから、低リン食負荷時の高カルシウム血症はIC-BのCaSRを活性化し、そのシグナル下流にあるPendrinの発現量増加および活性化に関わることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
低リン食負荷により高カルシウム血症を誘導し、腎集合管間在細胞type B(IC-B)に発現するカルシウム感知受容体(CaSR)のシグナルが、Pendrinによるアルカリ分泌に寄与するか否かを検討した。Pendrin KOマウスは、アメリカより入手した際129系であり、我々がこれまで行ってきた動物実験はすべてC57BL/6で行ってきたため、系統間の違いが大きく(尿量、低リン食負荷後の尿pH変化の程度)、すぐに使用することが出来なかった。そのため、129系をC57BL/6とバッククロスさせ、10世代以上経過したところで実験を開始した。バッククロスに時間を要したため、WTマウスとPendrin KOマウス間の血液・尿データは得たが、組織化学的解析は遅れている。 また、IC-B特異的蛍光発現マウスの作製を、ゲノム編集技術を用いて着手した。Pendrinの遺伝子下流にmCherry遺伝子が配置されるように組換え用ssDNAを作製し、マウス受精卵に導入した。遺伝子導入されたマウス(F0)を得て、F1獲得に向けて交配中である。
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今後の研究の推進方策 |
腎集合管のCaSRの機能を解析するために、引き続きPendrin KOマウスを用いて尿アルカリ化について精査する。また、CaSR活性化薬(NPS R-568)、阻害薬(NPS2143)を用いて、投与後の血液、尿成分の変化を解析し、酸塩基調節に関わる分子の発現変化を、ISH法、IHC法、western blotting法などにより調べる。 IC-B特異的蛍光発現マウス作製も引き続き行う。F1でIC-B特異的発現であることを確認した後、microdissection法により集合管を取りだし、CaSRのアゴニスト(ネオマイシン、R-568等)負荷時の細胞内カルシウム上昇を観察する。
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次年度使用額が生じた理由 |
輸入品の試薬の納品が遅れ、次年度の支払いになってしまったため残額が生じた。
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