研究課題
本研究は、筋小胞体のカルシウム遊離チャネルであるリアノジン受容体(RyR)の作動機構を原子レベルで明らかにすることを目的としている。そのため、分子内に多数存在する疾患変異の表現型解析を行い、最近得られた原子レベルに迫る高分解能構造モデルと照合することでチャネル作動機構の予測を行い、さらに予測に基づく人工変異導入による検証を行う。平成28年度は、1型RyR(RyR1)のチャネル領域のS4-S5リンカーからC末端に存在する悪性高熱(MH)およびセントラルコア病(CCD)変異体を作製して、機能解析を行った。疾患変異導入RyR1はHEK細胞に安定発現した。チャネル活性はカフェイン感受性、小胞体内腔Ca2+測定および定量的リアノジン結合法によって評価した。MH変異はチャネル活性が著明に亢進していた。一方、CCD変異はチャネル活性が抑制されていた。特にS5領域後半の変異は著明な抑制を示した。現在、これらの変異を構造モデルと照合して、作動機構予測を行っている。人工変異体の表現型も解析中である。
2: おおむね順調に進展している
本年度に予定していたS4-S5リンカーからC末端までの領域の変異については、ほとんど解析が終了した。構造モデルとの照合による作動機構の予測および人工変異体の作製も順調に進んでいる。
昨年にリアノジン受容体のさまざまな状態の構造モデルが相次いで発表された。それらには開状態およびリガンド(Ca2+、ATP、カフェイン)の結合状態が含まれていた。これらの構造と照合することで、より詳細な作動機構予測が可能になると考えられる。リガンド結合によるチャネル制御機構を知るためには、チャネル領域のみ鳴らずリガンド結合領域の解析が必要となる。来年度以降は、それらについても解析を行っていく予定である。
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