研究実績の概要 |
本研究は、筋小胞体のカルシウム遊離チャネルであるリアノジン受容体(RyR)の作動機構を原子レベルで明らかにすることを目的としている。そのため、分子内に多数存在する疾患変異の表現型解析を行い、最近得られた原子レベルに迫る高分解能構造モデルと照合することでチャネル作動機構の予測を行い、さらに予測に基づく人工変異導入による検証を行う。 平成29年度はS1からS4の膜貫通領域および周辺部位の疾患変異体を作製して機能解析を行う予定であった。しかし、2016年にRyR1のクライオ電子顕微鏡像が発表され、Ca2+、ATPおよびカフェインの結合が提唱された(de Georges et al., Cell 167, 145-157, 2016)。これらは活性化リガンドとしてチャネル制御に重要であることから、急遽、これらのリガンド結合部位近傍の疾患変異を探索し、その機能解析を中心に行うこととした。RyR2のカフェイン結合部位に存在するトリプトファンの変異はCPVTを引き起こすことが報告されていた。この変異体を機能解析したところ、活性化Ca2+感受性が大きく増大し、カフェインに対する感受性が消失していた。リガンド結合領域の構造比較から、カフェイン結合部位のトリプトファンを介する疎水性相互作用がCa2+結合部位の親和性を制御している可能性が浮上した。そこで、関係するアミノ酸残基を置換した変異体を作製して検証実験を行ったところ、Ca2+結合部位とカフェイン結合部位が密接に関連してCa2+結合を制御していることが明らかとなった。この結果については論文にまとめて投稿中である。
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