研究実績の概要 |
本研究は、筋小胞体のカルシウム遊離チャネルであるリアノジン受容体(RyR)の作動機構を原子レベルで明らかにすることを目的としている。そのため、分子内に多数存在する疾患変異の表現型解析を行い、最近得られた原子レベルに迫る高分解能構造モデルと照合することでチャネル作動機構の予測を行い、さらに予測に基づく人工変異導入による検証を行うものである。 最終年度である令和元年度はS1からS4の膜貫通領域および周辺部位の疾患変異および人工変異体を作製して機能解析を行った。その結果、S1-S2-S3-S4間の膜内での相互作用がチャネル活性の調節に重要な役割を果たしていることを見出した。 研究期間全体としては、チャネルの開口のトリガーであるCa2+の結合部位およびCa2+感受性を調節するカフェイン結合部位の機能を変異体解析により明らかにすることができ、論文発表を行った(Murayama et al., Commun Biol, 1: 98, 2018)。また、構造解析データに基づいて、Ca2+が結合してからチャネルが開口するまでのステップとそこに関わるドメイン間の相互作用の存在を示すことができた。これについては、現在、論文を執筆中である。本研究により、2MDaを超える巨大なイオンチャネルの動作原理の本質を明らかにすることができた。今後は、巨大な細胞質ドメインがどのように活性制御を行っているのかに迫っていきたい。
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