研究課題/領域番号 |
16K08511
|
研究機関 | 生理学研究所 |
研究代表者 |
山肩 葉子 生理学研究所, 助教 (20210338)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 蛋白質リン酸化 |
研究実績の概要 |
Ca2+/カルモジュリン依存性プロテインキナーゼIIα(CaMKIIα)は、シナプス可塑性や海馬依存性の学習・記憶に不可欠な分子として知られている。学習・記憶の本質的なメカニズムを追究し、ヒト疾患の予防・治療に貢献するためには、CaMKIIαの下流のシグナル伝達を探ることが重要である。しかしながら、学習・記憶の成立に不可欠なCaMKIIαの基質蛋白質についての知見は未だ乏しく、特に生体組織を用いた実験では十分な成果を上げていない。本研究では、学習・記憶障害を特徴とする不活性型CaMKIIαノックインマウス(CaMKIIα-KI)を活用することにより基質蛋白質探索の特異性を上げ、さらに、行動実験と組み合わせることにより、学習・記憶の成立に本質的な役割を果たすCaMKIIαの基質蛋白質の同定を目指している。 本年度は、昨年度に引き続き、野生型マウスとCaMKIIα-KIマウスの脳ホモジネートを用いて、内在性のCaMKIIαによって特異的にリン酸化される基質蛋白質の検索ならびに同定を進めた。それと並行して、野生型マウスとCaMKIIα-KIマウスの個体を用いて、学習・記憶に関わる様々な行動実験を行い、CaMKIIα-KIマウスに特異的な学習・記憶障害について解析を進めた。その結果、いずれも海馬依存性である空間認識記憶と場所条件付け記憶が、海馬非依存性である手掛かり条件付け記憶に比べて、遙かに強く障害されていることが判明した。さらに、上記解析で見出されたCaMKIIαの特異的な基質蛋白質が、学習・記憶の過程に伴って、実際にリン酸化を上昇させるのかどうかを今後検証する必要がある。その際に必要となる行動テストを絞り込み、その評価並びに条件設定等の検討を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
野生型マウスとCaMKIIα-KIマウスの個体を用いて各種行動解析を行うことにより、CaMKIIα-KIマウスに特異的な学習・記憶障害が判明した。また、CaMKIIαの特異的な基質蛋白質が、学習・記憶依存的にリン酸化を上昇させるかを検証するのに適した行動テストを絞り込めた。
|
今後の研究の推進方策 |
内在性のCaMKIIαの基質蛋白質の解析・同定を進める。また、有望な蛋白質に対してリン酸化特異抗体を作製し、学習・記憶の過程に伴って、これらのリン酸化が実際に上昇するかどうかについて、検証する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 既存の設備を最大限活用することにより、節約に努めた。また、現存機器を活用できる実験を優先的に行ったため。 (使用計画) 新たな実験のための機器、試薬、実験動物の購入等、計画的に執行して行く予定である。
|