(平成30年度の成果の具体的内容)p53依存的細胞死を誘導するセル・ベースアッセイから我々が微生物代謝産物から見出した新規化合物であるキノフラシンやコッコキノンについて昨年度、マウスを使った急性毒性でキノフラシン、コッコキノンは50 mg/kgで毒性を示さなかったことからこの濃度と投与量を半分にした25 mg/kgの2種類の濃度投与するマウス群について抗腫瘍効果の評価を行なった。キノフラシン、コッコキノンはp53依存的細胞死を誘導することから野生型p53を発現するがん細胞をマウスに移植して評価する必要がある。野生型p53を発現する種々の組織由来のがん細胞についてキノフラシンやコッコキノンに対する感受性をin vitroで解析した結果、大腸がん細胞株HCT-116と前立腺癌細胞株LNCaPが感受性が高いことが明らかとなった。これらの2種類のがん細胞をマウスの皮下に移植してその後にマウスの尾静脈から投与を週3日行なった。その結果、前立腺癌細胞株LNCaP移植した腫瘍をキノフラシンが縮小させることが明らかとなった。 (平成30年度の成果の意義)キノフラシンはin vitroのp53依存的細胞死を誘導するセル・ベースアッセイで見出した化合物であるがin vivoでがん細胞の増殖を抑制することが明らかとなった。このことはキノフラシンがin vitroと同様にin vivoでも抗腫瘍効果を有することを示す成果である。 (平成30年度の成果の重要性)in vitroのスクリーニングで見出した化合物はin vivoで活性が見られないケースがよく見られることが多い。その中で今回の結果は、キノフラシンが抗腫瘍効果を持つリート化合物となるポテンシャルを持っており、その標的や対象がんへの作用メカニズムを解明してより抗腫瘍効果の高い化合物への糸口となる重要な成果である。
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