研究課題/領域番号 |
16K08515
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研究機関 | 国立研究開発法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
秋山 正志 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (30298179)
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研究分担者 |
小亀 浩市 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (40270730)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ADAMTS13 / クリアランス受容体 |
研究実績の概要 |
本研究ではVWFを切断することで血栓形成を抑制的に調節している血中メタロプロテアーゼADAMTS13のクリアランスに関与する受容体の同定とその生理的役割の解明を目指している。はじめにADAMTS13のクリアランスに関与する可能性がある複数のクリアランス受容体候補を発現する細胞もしくはトランフェクションで発現させた細胞を用いて、精製した組換えADAMTS13タンパク質の結合および細胞内へのエンドサイトーシスを観察した。具体的にはLDL Receptor-related protein 1 (LRP1)を発現するBeWo細胞およびSialic acid-binding Ig-like lectin 5 (SIGLEC5)を外来的に発現させたHEK 293細胞を用いた。実験に用いたADAMTS13はC末側mCherry融合タンパク質もしくはN末FLAGタグ付きのものを293細胞で発現させ精製した。受容体への結合は無血清培地下で4C,60分、取り込みは37C、3時間培養後、細胞を固定し、結合および取り込みをmCherry融合ADAMTS13は直接蛍光で、FLAGタグ付きADAMTS13は免疫蛍光染色により顕微鏡観察した。しかしながらがどちらの実験でも明確な取り込みは観察されず、LRP1やSIGLEC5がクリアランスに関与する可能性は低いと考えられた。つい最近、ADAMTS13の取り込みに1本鎖の膜貫通型タンパク質で、ヘモグロビンスカベンジャーレセプターとして知られるマクロファージのCD163が関与していると報告された(Blood Adv. 1:293-305, 2017)。そこでCD163を外来性に発現させたCHO-K1細胞を用いて取り込み実験を行ったが、明確な取り込みは観察できなかった。現時点でその理由は不明である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
クリアランス受容体の可能性が高いと考えていた受容体候補の発現細胞においADAMTS13の取込みが観察されず、他の受容体候補の検索を余儀なくされ、予定していた実験を行うことができなかった。またADAMTS13を特異的かつ高感度に認識する抗体を用いることができないため、タグ融合タンパク質やタグ付きタンパク質を発現させる必要が生じたが、ADAMTS13は高分子量の分泌タンパク質であるため十分な量が得られなかったり、検出感度に問題が生じ実験が停滞してしまった。さらに、研究開始後にADAMTS13のクリアランスに関与する受容体としてCD163を同定したとする論文が発表されたことで、今後の研究の推進の方向性の再検討を行う必要が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
ADAMTS13は血中タンパク質であることから基質であるVWFや多くの凝固因子同様にマクロファージによりクリアランスされる可能性が高い。我々が検討したSIGLEC5およびLRP1受容体、ごく最近論文でADAMTS13のクリアランスに関与すると報告されたCD163のいずれもマクロファージ上に発現している。そこで今後単球由来細胞株をin vitroでマクロファージ様細胞に分化させ、より生体に近い条件下でADAMTS13の取り込みを観察する予定である。様々な単球細胞株が存在するが、CD163はSU-DHL-1細胞に発現している一方、THP-1細胞には発現していない。一方、SIGLEC5はTHP-1やU937細胞に発現しているが、HL-60細胞には発現していない。さらにLRP1はJ-774A.1細胞に高発現しているとの報告がある。これら複数の単球細胞株を使い分けることで、ADAMTS13のクリアランスに重要な受容体を同定することを試みる。またADAMTS13のクリアランスのマクロファージの生理学的な重要性を検証するために、マウスにクロドロン酸内包リポソーム を投与してマクロファージを枯渇させた場合の投与ADAMTS13のクリアランスを調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞の購入費用の一部を次年度に繰り越した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度の科研費と合わせて細胞を購入する費用に充てる。
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