これまで、神経活性化マーカーであるc-fosタンパクが発現した細胞のみにeGFPを発現するトランスジェニックラットを用い、蛍光を指標として末梢部位の刺激にて修飾を受ける中枢神経が蛍光顕微鏡下にて生細胞の状態で同定可能な蛍光強度かつ蛍光持続時間を有していることを報告した。本年度は、より厳密にGLP-1門脈内投与にて修飾を受ける神経細胞を同定する事を目的とし、実験条件を検討した。GLP-1を門脈内へ投与した際に、門脈にて受容されたGLP-1受容シグナルは左迷走神経を介し孤束核左側へ入力されることから、標的とする蛍光陽性神経細胞は孤束核の左側に局在していると推察されるが、これまでの実験条件下では左右の孤束核領域にて蛍光陽性細胞数に差異はあるものの、右側孤束核領域にも蛍光陽性細胞が観察され、門脈からのGLP-1受容シグナルに加え、それ以外の刺激にて修飾を受けている細胞も検出されている事が示唆された。まず、孤束核領域におけるGLP-1摂食抑制シグナルの最大効果のタイミングを探る事を目的とし、GLP-1投与前に様々な絶食時間を設定し実験を行った。その結果、絶食時間に比例して、孤束核領域における蛍光陽性細胞数に左右局在差が生じるものの、12時間以上の絶食時間においては有意な変化は観察されなかった。また、門脈内へのGLP-1投与は、シリコンチューブ(事前に施術し一端を門脈内に、他端を頸部より露出させ、術後の回復を待ち実験を行った)を介して行うが、投与時にラットのストレスをできるだけ軽減することを目的とし、頸部から露出したチューブをケージ外まで延長し、馴化飼育し、ラットから実験者の姿が見えない状態でGLP-1を投与することで、右側孤束核領域の蛍光陽性細胞が有意に減少したことから、これまで観察されていた蛍光陽性細胞の中にストレスに伴い修飾を受ける細胞が含まれていることが明らかになった。
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