末梢循環血液中のβ2ミクログロブリンが本当に加齢に伴う体内時計の機能変化の誘発因子であるかどうかを直接的に証明するためには、β2ミクログロブリンシグナル伝達系の阻害により加齢およびβ2ミクログロブリンによる体内時計機能の諸変化が見られなくなることを検討しなければならない。そこで、時計遺伝子発光レポーター(PER2::LUC)ノックインマウス線維芽細胞(MEF)を対象にして、リアルタイム発光リズム解析を行った。MEFを35 mm培養皿に播種し、その1日後にデキサメタゾン同調を行い、培地中にルシフェリンを添加して発光リズムのリズム周期、振幅、頂点位相を解析した。β2ミクログロブリン投与によるリズム周期を解析したところ、β2ミクログロブリン投与は加齢に伴う変化と同様に発光リズム周期の延長作用を示した。さらにβ2ミクログロブリンシグナル伝達分子のtap1のノックダウンによりキャンセルされ、β2ミクログロブリンが細胞内に取りこまれた後にMHC Iと会合し、Tap1依存的に細胞膜表面に輸送されることが必要であることが明らかになった。また、β2ミクログロブリン慢性投与後の若齢マウスの視交叉上核を免疫染色によって検討したところ、平成29年度に観察されたアルギニンバソプレシン陽性細胞の密度低下のほかに時計ニューロン間のリズム位相同期作用を担うアストロサイトの細胞密度の低下が観察された。このモデル細胞でのTap1ノックダウンの実験条件の検討に時間を要したため、ノックアウトマウスの解析は当該年度中に解析を終了できなかった。
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