近年糖尿病では、膵島量の減少を伴うインスリン分泌不全が発症に先行して出現することが明らかになり、膵島量の制御機構の解明が急がれている。我々は、この機構を解明する目的で、膵β細胞特異的に細胞を誘導しその後の再生を解析する「膵島再生マウス」と膵β細胞の移植により膵β細胞が過剰な状態を誘導する「擬膵島移植マウス」の2つのモデルを用いて膵島再生機構を解析している。また再生機構を解明するために必要なレーザーキャプチャーマイクロダイセクション(LCMD)法による膵島単離の実験系を立ち上げた。この手法を用いて平成30年度はLCMD法による解析を進めた 解析の過程で、膵島再生マウスでは細胞死誘導効率の差によりその後の血糖値が左右されることが判明したため、確実に細胞死を誘導できる実験条件の最適化を行い、その後にLCMD法で再生現象を解析した。膵島再生時のインスリンの発現変化や細胞分裂を、免疫染色とLCMD法によるqPCR解析の間で比較解析することにより、LCMD法によるqPCR解析により膵島再生現象を定量的に評価できることを確認した。そこで次に細胞分裂マーカーのqPCR解析により膵β細胞増殖を経時的、定量的に評価した。さらに、再生膵島では未熟な膵β細胞の遺伝子マーカー群の発現が誘導されることを見いだした。一方、膵亜全摘術により膵島量を膵島再生マウスと同等まで減少させた場合には、細胞増殖は誘導されるものの未熟な遺伝子マーカー群は誘導されず、再生条件によって異なる膵β細胞の再生応答が惹起されることが明らかになった。
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