研究課題/領域番号 |
16K08524
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
高橋 路子 神戸大学, 医学部附属病院, 特命講師 (70570274)
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研究分担者 |
高橋 裕 神戸大学, 医学研究科, 准教授 (70301281)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ケマリン / ChemR23 / アディポカイン / レゾルビンE1 / 脂質メディエーター / 糖尿病 / 敗血症 |
研究実績の概要 |
私たちは新規アディポカインとしてケマリンを同定した。ケマリンはChemR23のリガンドで炎症を制御するケモカインでもあることが明らかにされている。一方アディポカインとしての代謝調節作用もあり、代謝と炎症を結びつける因子として注目を集めている。 ノックアウト(KO)マウスの解析から、ケマリンが膵β細胞におけるグルコース依存性インスリン分泌、肝臓、筋組織におけるインスリン感受性、脂肪組織における炎症を調節することにより糖代謝において重要な役割を果たしていること、さらに日本人糖尿病患者において血中濃度が低下しており、ヒトにおいても糖尿病発症に関連している可能性を報告してきた。 本研究では主にケマリンKOマウスを用いて代謝と炎症の調節機構を解明するとともに、患者検体を用いて炎症性疾患における脂質メディエーターとの関連および炎症の収束機転におけるケマリンの役割を明らかにすることを目的とする。 ケマリンの受容体であるChemR23を共通の受容体としているレゾルビンE1をはじめとする脂質メディエーター等を神戸大学質量分析総合センターの液体クロマトグラフ質量分析システム(Sciex 6500Qtrap)や脂肪酸の分離に優れた極性の高いカラム(SIGMA-ALDRICH SP2560カラム)を実装したガスクロマトグラフ質量分析装置(島津製作所QP2010Ultra)を用いて測定、解析している。 その結果、ノックアウトマウスの血中、白色脂肪組織中には炎症性のプロスタグランジンD2とE2が上昇し、白色脂肪組織において抗炎症性のレゾルビンD1が低下していることが明らかとなった。現在はヒトにおいてもケマリンの代謝、炎症性疾患における脂質メディエーターとの関連および炎症の収束機転におけるケマリンの役割について解明をすすめている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マウスの実験で得られた結果を踏まえて、重症患者における急性および慢性炎症疾患(胸腹膜炎、敗血症や重症ウイルス感染、真菌感染そしてbacterial translocation:重症患者の腸管粘膜バリアの破錠によって、本来消化管の中にとどまるべき腸内細菌が血流を介して体内に移行し感染を引き起こす状態)症例の炎症極期と、治癒中、治療後または背景因子を揃えた炎症を認めない症例を対象(propensity score matching)について、血中ケマリン濃度の測定と炎症指標、脂質メディエーター解析を行うため、順次症例を選定し、臨床研究へのエントリー、サンプル回収に努めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
重症患者における急性および慢性炎症疾患(胸腹膜炎、敗血症や重症ウイルス感染、真菌感染そしてbacterial translocation:重症患者の腸管粘膜バリアの破錠によって、本来消化管の中にとどまるべき腸内細菌が血流を介して体内に移行し感染を引き起こす状態)症例の炎症極期と、治癒中、治療後または背景因子を揃えた炎症を認めない症例を対象(propensity score matching)として症例の集積を行っているところであるが、対象者が限られるため今後も引き続き集積期間が必要である。 症例数が集積されてから、血中ケマリン濃度測定、脂質メディエーター、質量分析の測定を行い、単変量および多変量解析によって血中ケマリン濃度と関連する因子を明らかにする 。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスのサンプルは一部測定待ちとなっており、ヒトにおけるサンプルは症例数が集積されてから、血中ケマリン濃度測定、脂質メディエーター、質量分析の測定を行う予定であるため、測定費用の計上がまだされていないために使用額を移行した。 順次測定を行っていく予定である。
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