私たちは新規生理活性物質を探索する過程で脂肪細胞が分泌するアディポカインのひとつとしてケマリン(Chemerin)を同定した(FEBS letters 2008)。もともとケマリンは、ケモカイン受容体のファミリーでオーファンG蛋白共役型受容体であるChemR23のリガンドとして報告された(J Exp Med 2003;198:977)。 ケマリンのアディポカインとしての性質について、私たちはケマリンが欠乏するとインスリン分泌が低下して糖尿病を呈すること(Scientific Reports 2011)、糖尿病患者では血中濃度が低下していること(Endocrine J 2014)を報告した。さらにケマリンノックアウト(KO)マウスが肥満を呈し、体温、耐寒性の低下、褐色脂肪の機能異常を示すことを見い出した。そのほかにも血清中のケマリンレベルはBMI、中性脂肪、血圧と正の相関があり(Endocrinology 2007;148:4687)、2型糖尿病(Endocrine 2012;42(2):243)や、メタボリックシンドローム(Endocrinology 2007;148(10):4687)に関連していると報告されている。 さらにケマリンは動脈硬化性疾患、SLE、気管支喘息、非アルコール性脂肪性肝炎などの炎症性疾患において病態との関連が示唆されている。ケマリン受容体のChemR23はEPA・DHAの代謝産物であるレゾルビンE1の受容体でもあることから、ケマリンの炎症に対する役割を解析するために脂肪酸代謝物の包括的解析を行った。 その結果、ケマリンの作用として、炎症を惹起する脂質メディエーターを抑制し、炎症を収束させるレゾルビンD1を促進する作用があり、ケマリン-ChemR23系は各種炎症収束性脂質メディエーターを介して作用する炎症調節分子であることが新たに明らかになった。
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