研究課題/領域番号 |
16K08526
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
堀尾 修平 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学系), 助教 (80145010)
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研究分担者 |
上山 敬司 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (50264875) [辞退]
井樋 慶一 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (60232427)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 摂食調節 / 視床下部 / CRH / CRF / 室傍核 / 結合腕傍核 |
研究実績の概要 |
視床下部は、摂食調節に中心的な働きをしている。その神経回路を明らかにすることは、効果的な摂食抑制薬の開発に繋がる重要な課題である。現在、摂食調節の大まかな回路は解明されたが、それを担う個々の神経細胞のタイプ、神経経路については未だ断片的な情報しか得られていない。本研究では、神経経路選択的に特定の遺伝子を発現させる手法 (逆行性ウイルスベクターを用いる) と特定の細胞選択的に遺伝子を発現させる方法 (Cre recombinaseを用いる) を組み合わせることで、摂食調節に関わる神経細胞を詳細に特定するとともに、その神経経路を正確に辿ることにより、摂食調節回路を明らかにすることを目指している。前年度は、視床下部室傍核のCRFニューロン群に着目し、それらの脳内投射部位を明らかにした。本年度は、明らかになった投射部位、すなわち、孤束核、結合腕傍核、青斑核、背側縫線核、外側視床下部の各部位に逆行性ウイルスベクターを注入し、各部位に投射するCRFニューロン特異的にGFPを発現させた。その結果、異なる脳部位に投射するCRFニューロンは、室傍核内でそれぞれ特徴的なパターンで分布していることがわかった。また、脳内に投射するこれらのニューロンは、その殆どが神経内分泌ニューロンではないことも判った。次に、各投射部位に機能性分子(テタヌストキシン)をCre依存性に発現する逆行性ウイルスベクターを注入する実験を行った。その結果、室傍核の各CRFユーロンに特異的にテタヌストキシンが発現した。テタヌストキシンは神経活動を抑制するため、それらのニューロンの生理機能を調べることが可能である。上記の手法を用いることにより、室傍核のCRFニューロンを投射部位により細分類し、その経路を正確に辿り、生理機能を調べることが可能になった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
遺伝子改変マウスとウイルスベクターを用い、視床下部室傍核のCRFニューロンの脳内投射部位を明らかにした。さらに、各投射部位に逆行性ウイルスベクターを注入する実験により、室傍核のCRFニューロン群をその投射先によりタイプ分けするという当初の目的が実現できた。以上のように、現在順調に研究が進展している。
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今後の研究の推進方策 |
視床下部室傍核のCRFニューロンの主な脳内投射部位として、孤束核、結合腕傍核、青斑核、縫線核、視床下部外側野が明らかになった。さらに、それぞれの脳部位に投射するCRFニューロンは、視床下部室傍核内で明らかに異なる分布を示した。すなわち、異なるタイプのCRFニューロンが、それぞれ異なる脳部位に投射し、異なる生理機能に関与していると考えられる。そこで、各投射部位にCre依存性に機能性分子(テタヌストキシン)を発現する逆行性ウイルスベクターを注入し、タイプ分けしたそれぞれの室傍核CRFニューロン特異的に、テタヌストキシンを発現させる。テタヌストキシンは神経機能を抑制するため、CRFニューロンの関与する生理機能に影響が見られるはずである。この実験により、それらのニューロンの関与する生理機能を明らかにする研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
試薬、実験動物の飼育・管理維持に関しては、共同研究の研究室間で共用できる部分があったため、物品費、その他の経費が予定よりも少額となった。結果として次年度使用額が生じた。 次年度は物品費、動物飼育費用、論文投稿料を含む成果発表費用に宛てる予定である。
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