研究実績の概要 |
視床下部に局在するオキシトシン神経は多様な脳領域に投射しており、社会行動・摂食・ストレス応答といった多様な生理現象に関与している。オキシトシンが社会行動に果たす役割に関する報告は多いが、オキシトシンのもたらす効果は成育歴や社会的文脈といった多彩な要因に修飾されることでその実態は捉えづらい。本研究は、複雑な入出力を持つオキシトシン神経の個別の投射経路を選択的に描出・活動操作し、その機能分担あるいは機能連関を明らかにすることを目的とした。 2019年度の研究実績としては、Oxtr-Creマウスの導入によるオキシトシン受容体発現細胞の投射経路解析の進捗が挙げられる。オキシトシン受容体発現細胞の可視化にはGFPの改変体であるVenusを選択的に発現するOxtr-Venusノックインマウスを用いていた。これまでの研究においては、GFPに対する特異的結合を契機とするCre分子の再構成を利用したGFP-dependent CreをOxtr-Venusマウスに適用することで、オキシトシン受容体発現細胞の投射経路を調べていたが、Oxtr-Creマウスの導入によってCre依存的なウイルスベクターを用いた遺伝子発現制御の効率が大幅に向上した。結果として、前頭前皮質だけでなく視床室傍核や中脳水道周囲灰白質においてもオキシトシン受容体発現細胞の投射経路を描出し、解析することが可能となった。 また、将来的な光を用いた投射経路選択的な遺伝子発現制御を見越し、脳内における青色光の透過範囲を簡便に可視化する技術開発を行った。その成果が研究期間内に論文掲載に至った(Inutsuka et al., 2020- Biochem Biophys Res Commun)。
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